3−2−1 段丘面の形成年代の検討−特に低位面について

布引山地東縁断層帯(南部)におけるLf面は地形面の傾斜が著しく、平坦な低位段丘面L1、L2、L3と同時期だが、正確な対比が困難なためLfとして一括したものである(平成11年度調査)。調査地では鳥戸断層の中央部(伊勢寺扇状地)と山口断層周辺に分布し、六呂木断層周辺にもわずかに分布する。これらは地形区分上はほぼ同時期と考えられる。鳥戸断層周辺では中位面に対比される傾斜した地形面Mfも見られる。これらのMf面、Lf面は古くから継続してきた断層運動により、上盤側の山地から流出した土砂が堆積して形成された古い扇状地と考えられる。これは著しい断層変位に伴う現象と解釈される。

トレンチT1/ボーリングB1地区、及びボーリングB6/露頭剥ぎ調査地区ではLf層とL3層の年代がいくつか得られており、これを下記に示す。

@ T1/B1地区のLf層の年代

・ トレンチ内のLf相当の砂層が約1.2万年前

・ ボーリングB1−3のLf層が8430±40 yBP〜15740±50 yBP

A B6/露頭剥ぎ調査地点のLf層の年代

・ 露頭のLf相当の土壌が約1.0−1.1万年前

・ ボーリングによるM層上面の土壌化層が約1.0万年前

B T3/B5地区のL3層の年代

・ トレンチT3.2のL3層(フラッドローム)が約1.1万年前

以上の年代値を総合すると、Lf層の年代の上限は概ね約1.0−1.2万年前で、L3層も同様である。ただし、この年代値の上限は、場合によっては約8,000 yBPまで時代が下ることも考えられる。これらの年代はLf層のほぼ上限を示すもので、低位相当の扇状地Lfの形成時期はほぼ更新世だが、一部は完新世にまで及んでいた可能性が示唆される。

なお、平成11年度までの調査では、地形面の年代を主に八木・寒川(1980)、太田・寒川(1984)の研究に基づいていた。これらに本年度の年代測定結果を加味すると、Lf面の形成年代は1〜3万年前、櫛田川沿いのL3面は1〜1.5万年前となる。したがって調査地の地形面の形成年代は以下のように想定される。

・ H1面   :15万年前

・ H2面   :12万年前

・ M面/Mf面:5−8万年前

・ L1面   :2.5万年前

・ L2面   :2万年前

・ L3面   :1−1.5万年前

・ Lf面   :1−3万年前

このうち、L2面の年代はトレンチT3.2における断層の活動時期に直接関連するため、年代を特定する必要がある。