3−1−1 小山断層の考察−特に物理探査
地形・地質調査、浅層反射法探査(P1測線)から、小山断層は平成11年度調査で「小山断層は島田山山麓からやや離れた一志層群〜東海層群の境界付近に位置する西上がりの断層」とされており、また、「小山断層は大局的には一志断層の延長上に位置し、一志断層の一部を構成していると考えられるが、一部にはこれを切る構造も認められる。また、高位面H1では変位地形が明瞭であるが、南方延長方向にある嬉野町島田の中位面Mには変位が認められないことから、中位面以降の活動がないものと考えられる」とされている。しかも小山断層の断層露頭は正断層であり、一志断層がすべて逆断層であることと整合しない。一志層群の中には正断層型の断層が見られる(平成9年度調査)ことと併せて考えると、正断層を形成する小山断層の活動は更新世以前の古い活動と考えられる。更新世以降はH1面にのみ撓曲が見られるように、小山断層は高位面の時代まで活動したものの、その後、活動の場が変わったことが考えられる。一方、平成12年度の反射法探査(P1測線:中村川右岸側)では、第三紀中新世の一志層群が地下で大きく撓曲しており、地層のずれや断層構造がないことがわかった。このことから、小山断層は南方の中村川付近には達しておらず、むしろ新第三系の褶曲構造となっており、小山断層〜鳥戸断層の間の地域では、水平圧縮の歪みがせん断構造ではなく、地層の撓みとして解消されている可能性がある。ただし、前述のように、小山断層やその南方延長地域でH2面以降の活動がなくなったのかどうかは確証がない。
なお、小山断層の東方、天花寺におけるH1面の傾動は反射断面で見られる撓曲と同じ機構(東西圧縮)によって形成された可能性がある。さらにその東方の崖に「天花寺断層」(岡田・東郷編、2000)が提唱されているが、その南方延長に当たるP1測線で探査した限りでは、西上がりの断層は確認されなかったため、地層の撓みにとどまっていることが考えられる。少なくとも付近の第四紀後期の地層および地形に断層変位の明確な証拠はない。