(2)地質構造

A2の下面は階段状の形態を示し、下部の腐植土にも乱れが認められ、遺物が出土したことから、人工的なものであることが明らかである。しかし、人工改変がB1の一部にまで及んでいる可能性も否定できない(前述)。B層のうち、上位のB1〜B2は下位層を不整合に削っている。B3以下は崖下(断層の下盤側)に乱雑に堆積したか、東側に整合に堆積したもの(B4、B5、B6、B7)で、一部はその後の断層活動により、うねるような圧縮変形を被ったと考えられる(B7、B7a〜b)。

C層は砂の挟みと平行に礫が配列する“整然層”である。C2の上部や、C1の上部は乱雑で明確な堆積構造がなく、特にC1上部では砂と混合する部分がある。

C−S2は地層の中に伸びと平行な白色の筋(LS)が見られ、上側の地層のシルト部分が折り畳まれたり、砂にクサビ状に押し広げられていることから、白色の筋をすべり面として上側の地層が剥離してすべり落ちたものと考えられる。この地すべりはC−S2の上位層を載せない開放に近い状態、あるいはごく薄い礫層(C1)を載せた状態で発生したと想定される。C−S2は下部が湾曲して逆転しているが、地すべりの後に変形した可能性もある。

C−S3は地層の伸びもその周辺の礫の方向も傾斜しているが、この構造を切ってほぼ直立する幅5〜10cmの縦亀裂(K)が入り、砂と有機質な土壌によって充填されている。上部はクサビ状にやや開放している。縦亀裂は堆積構造を切っていることから、C層の堆積後に形成された開口亀裂(引っ張り亀裂)と考えられる。

F1、F2、F3は、礫の強い配列があり、部分的に礫層が砂層に乗り上げていることから、断層活動によるせん断面と考えられる。F3の先端部はC1’に被われて途中で途切れており、B5まで達していない。各断層の移動量は、適当な変位基準がないため明確ではないが、それぞれの地層のずれは断層F1、F2の傾斜方向の移動量(ネットスリップnet slip*)が、N面で70〜80cm、S面ではおよそ1mである。断層F3の移動量はN面、S面とも不明である。

*(注)ネットスリップnet slip:断層の移動量のうち、断層面に沿った傾斜方向のずれを言う