弾性波探査は、地表あるいは地表付近で震動(弾性波)を人工的に発生させ、その地下からの応答(地震記録)を測定し、地下構造を推定する手法である。人工的に発震された弾性波は、地下の弾性的性質(音響インピーダンス:密度と速度の積)の異なる境界面(地層境界など)に達すると、その震動エネルギーの大半は屈折波として下位の地層へ伝播するが、一部は上方へ反射して地表に返ってくる。この波を地表に配列展開した受振器によってとらえ、弾性波の到達時間や震動エネルギーの減衰の状況などから地下構造を推定する。
(2) 測定方法
@ 測 量
反射法弾性波探査に先立って、全受振点・発震点の水準測量およびトラバース測量を実施した。なお、P1、P2測線の水準測量の基準は次のとおりである。
・ P1測線:嬉野町地形図(縮尺:1/2,500)の測点No.20から約200m南方にある県道嬉野・美杉線上の図根点(標高17.2m)(図2−1−2)
・ P2測線:松阪市都市計画図(縮尺:1/2,500)の測点No.392付近の市道西野・山口1号線上の図根点(標高92.1m) (図2−1−4)
P1測線の標高は14m〜22mの範囲にあり、ほぼ平坦である。P2測線は東端で標高約52m、西端で約103mである。
A テスト測定
各測線での本測定に先立って、下表に示すテストを実施した。
表2−1−2 テスト測定一覧表
(a) P1測線−発震周波数
測定に先立ち、測定仕様を決定するため、発震周波数帯域を検討した。その結果、発震周波数帯域は20〜120Hzが適していると判断した。なお、垂直重合数は、測線東半部の測定では4回としたが、西半部では県道の交通量が非常に多いため、交通量の少ない時に測定し、1〜4回とした。
(b) P2測線−垂直重合数
垂直重合数について検討した結果、重合数が10回以上では大きな変化が認められなかった。このことから本測定での垂直重合数は、原則として10回とし、エネルギーが弱い場合は重合数を増やすこととした。
B 測 定
テストの結果に基づき、表2−1−3に示す方法で測定を実施した。
表2−1−3 浅層反射法探査の方法
探査深度を考慮して、P1測線では片側59チャンネルのスプリット(振り分け)展開(最大オフセット距離:580m)、P2測線では片側60チャンネルのスプリット展開(最大オフセット距離:147.5m)で行った。
P1測線(震源:ミニバイブ)における測定手順は、以下のとおりである。
バイブレータ震源の発震時間は10秒で、その間、各受振点で受けた信号は CMPケーブルにより観測車内の探鉱機へ送られる。 探鉱機ではスウィープ毎に震源から送られたパイロット信号との相互相関を取り、所定の垂直重合を行う。モニター記録をチェックし、記録が良好ならば探鉱機内のハードディスクに書き込み、保存した。
測定が終了したら、震源を次の発震点に移動して同様の測定作業を繰り返した。このような測定方法は共通反射点(CRP:common reflection point)水平重合法と呼ばれる。
(3) 測定機器
浅層反射法弾性波探査に使用した測定機器は、表2−1−4に示すとおりである。
表2−1−4 浅層反射法探査使用機器