図2−1−3に解釈断面図を示す。上部に明瞭に連続する3つの反射面が認められ、深い部分では反射面の連続性は不明瞭である。比較的明瞭な反射面のうち、上位から2,3層目の反射面およびその間の部分は、比較的振幅が大きく連続性の良い反射面が見られることから、砂岩層とシルト層または粘土層との互層からなると推定される。一方、これより深部の反射面は、全体に振幅が弱く断続的であることから、砂岩層などの比較的均質な地層からなると推定される。地表地質踏査の結果から、No.140〜190付近は新第三系一志層群の井生泥岩層(Iu)、No.140以東の上位層は三ヶ野凝灰質シルト岩砂岩層(Im)とみられる。
いずれの反射面も傾斜は測線東端で緩く、西に向かって徐々に浅く、かつ急傾斜となり、明瞭な撓曲構造を示す。反射面の見かけの傾斜は最大約40°である。それぞれの反射面は撓曲しながらも間隔にほとんど変化がないことから、それぞれの地層が堆積した後に、この撓曲構造が形成されたと考えられる。また、明瞭かつ連続性の良い反射面には垂直方向のずれが認められないことから、少なくとも本地域には地層を切って鉛直変位させる顕著な断層は存在しないと考えられる。
しかし、測線の西部のNo.150以西では、東に急傾斜する反射面が地表付近まで延びているように見え、速度層分布からみても新第三系の急傾斜した地層(表層部の低速度層を欠く)が地表まで分布することを示している。この地層の急傾斜帯は北方の小山断層周辺に認められるH1面の撓曲帯の南方延長に一致する。P1測線付近の地表には断層変形を被った地形面は認められないが、新第三系を撓曲させた地殻変動がH1面の時代まで続いていたことを示唆するものと考えられる。
なお、測線の東部は、天花寺断層(岡田・東郷編、2000)の南方延長に当たるため、地下に何らかの変形構造が存在することも予想されたが、それらは探査した限りでは確認できない。
(2) P2測線の解釈
図2−1−5に解釈断面を示す。浅部の反射面はほぼ水平に連なり、段丘礫層(Lf相当)と花崗閃緑岩または新第三系との境界と考えられる。やや深部の反射面は、新第三系と花崗閃緑岩の境界と考えられる。地表地質踏査の結果から新第三系は一志層群井生泥岩層と思われる。
各反射面の系統的不連続から、測点No.390付近(山口断層の位置)に西上がりの断層、No.70付近(ほぼ鳥戸断層の位置)に東上がりの断層が推定される。また、No.100付近に西上がりの小断層、No.140付近に東上がりの小断層が推定される。両断層の間にはスラストリッジ*のような変位地形は認められない。表層部の段丘堆積物(Te)はLf相当層と見られる。
地形判読では測線の南側に分布するM面に明瞭な断層崖があるが、Lf面には認められない。反射断面においても、推定断層の上方延長部では反射面の顕著なずれは認められないので、探査のの解像度を上回るような規模の断層変位は生じていないものと考えられる。
この断面図で、山口断層と鳥戸断層に挟まれた区間は、地溝状の形態となる。地形判読によれば鳥戸断層の最近の活動は西上がりであり、反射断面ではこれとは逆の運動となる。その説明として、鳥戸断層は第三紀末まで東上がりだったが、第四紀に西上がりに転じた可能性が考えられる。
*(注)スラストリッジ(thrust ridge):両側を逆断層に挟まれた地塊が尾根状に突出した地形を言う