(1)地形面区分

地形判読の結果、断層変位地形の変位基準面となる地形面を以下のように区分した。

表2−3 地形面区分

ただし、地形面の高度分布は、調査地南部の一志町〜松阪市と勢和村の境界部を境に、北側(雲出川〜中村川流域)が低く、南側(櫛田川流域)が高い傾向にあり、同時代の地形面を広い地域にわたって高度分布により単純に対比することはできない。このため、北側一帯は平成10年度に調査を行った雲出川の北側の区分を参考に南方へ延長し、南側は櫛田川の下流域から調査地まで遡って判読し、地形面区分を行った。したがって、段丘面の沖積面からの比高は、調査地の北側では大きく南側では小さい。

高位面H1は、小山断層東側の一志町小山から嬉野町島田の間に分布する。一志町小山では山間部の山腹にも分布がみられるが、侵食のため地形面は不連続で断片的である。松坂市小野町付近の中村川南側や、松阪市岡本町付近などの阪内川両岸にもわずかに分布している。地形面は開析されているが、丘陵頂部には平坦面が保存されており、櫛田川南岸では比較的面の保存が良い。

高位面H2は、嬉野町島田や松阪市宝塚町、また勢和村片野などの櫛田川沿いに比較的広く分布している。島田付近では開析がかなり進んでいる。このほか、中村川と阪内川の間の山麓にもわずかに分布している。堆積原面は開析されているが、松坂市南東の丘陵地では平野に近いほど丘陵頂部に平坦面をよく残している。

中位面Mは、嬉野町島田、嬉野町下之庄上野などの中村川の両岸、松阪市岡山町周辺の阪内川左岸側に分布する。一志町小山では山間部の山麓緩斜面にも分布するが、侵食のため面は不連続で断片的である。中村川両岸に見られる中位面Mは平坦な原面が広く分布しているが、阪内川左岸に見られる面はやや開析が進んでいる。

低位面は調査地南部の櫛田川沿いについては、低位段丘面が3面(その他の地域では2面)に区分され、雲出川沿いとそれ以外の地域で段丘面の発達状況が異なっている。

低位面L1は、雲出川と中村川に挟まれる地域と櫛田川沿いに分布しており、特に雲出川沿いに広く分布する。

低位面L2は、本地域で見られる段丘面のうち、最も広範囲に分布している。雲出川・中村川沿いの一志町片野付近と嬉野町嬉野付近、松阪市伊勢寺町鳥戸などの枡形山から観音岳にかけての山麓、及び櫛田川沿いに広く分布している。このうち雲出川・中村川沿いの面や松阪市伊勢寺町鳥戸周辺の山麓の面では、部分的に沖積面との境界が不明瞭となる。

低位面L3は主に雲出川沿い、及び櫛田川沿いに分布している。これらの低位面は平坦でほとんど開析されていない。

なお堀坂川以北の桝形山から観音岳に至る山地の東麓には広い扇状地が形成されている。これらの扇状地は、現河床面または沖積面からの比高を目安にした区分が可能な大河川沿いの段丘面に連続していないことと、山間地では分布が狭く断片的であるために、大河川沿いの中位〜低位段丘面に対比する事が困難である。よって、これらの地形面については河床面からの比高を参考にしつつ、地形面の開析の程度と堆積物の風化の程度から、中位面相当の中位扇状地Mfと低位面相当の低位扇状地Lfに区分した。また、主に櫛田川北岸において低位段丘面を覆って分布する比較的小規模な扇状地を新期扇状地Afとした。低位扇状地面は比較的広範で、2〜4°余りの勾配を示し、小規模な谷によって網状に侵食、開析されている。中位扇状地面は開析が進行しており、分布は山麓沿いに限られている。

段丘堆積物、及び扇状地堆積物が形成する地形面と、木村(1971)の地形面の対比を表2−4に示す。

表2−4 調査地の第四紀地形面と既存文献との対比