表2−1 収集ボーリング資料数
これらの資料に基づいて、既存ボーリング資料による基盤地質分布図(図2−1)および基盤地質上面標高分布図(図2−2)にまとめた。また主要な地質断面を6断面作成した(図2−3、図2−4、図2−5、図2−6、図2−7、図2−8)。ここでいう“基盤”は先第四系を指し、一志層群、東海層群を含む。なお個々の資料は一覧表(巻末)に整理した。
以下、各断面について説明する(地形面区分、地質区分および地層名は後段の地表踏査結果および地質各説を参照)。
<A断面>:嬉野町天花寺(東西断面)
広く分布する高位面H1の東端部に位置し、沖積面との境界付近に当たる。東海層群の上面標高は崖を挟んで著しく異なっている。崖上部のボーリングに記載された地層は、段丘面上の道路の掘削のり面にみられるものと同じであると考えられ、東海層群を高位1段丘礫層が覆っている。しかし崖下のボーリングにみられる礫層は構成物の詳細が実際に確認できないため、両者の正確な対比は困難である。したがってこの地形が侵食地形であるか、または崖付近に西上がりの断層があるのかは、この断面からは判断できない。少なくとも、崖上部に分布する地層には撓曲等の変形は認められない。断層の有無の確認のためには、断層を挟むボーリングの地層を詳細に比較すること、および物理探査等による地下構造の調査が必要である。
<B断面>:嬉野町島田(南北断面、日本道路公団資料)
基盤の東海層群と一志層群が接しており、日本道路公団の資料によると両者の間に断層が推定されている。基盤(先第四系)を覆って高位1段丘堆積物がのるが、断層を挟んで分布高度に大きな差はない。断層位置は踏査から推定された位置とほぼ一致している。
<C断面>:嬉野町堀之内(南北断面)
断面の中村川以南で、基盤の一志層群上面の深度に北が高く南に低い高度差が認められる。その比高は約6mである。これは、中村川の侵食による旧河道の谷壁である可能性が高いが、この地点が小山断層の南方延長部に当たることから、断層変位による撓曲変形の可能性も否定できない。
<D断面>:松阪市伊勢寺町鳥戸(南北断面、日本道路公団資料)
基盤の東海層群と一志層群が接しており、両者の間(堀坂川付近)に南西側隆起の断層が推定される。これは踏査と写真判読の結果とも整合し、鳥戸断層に相当する。
<E断面>:松阪市笹川町〜阿形町(北西断面)
ほぼ阪内川沿いの断面である。ボーリング資料から、チャートに富む礫層が東海層群に相当すると思われるが、深度があまり明確ではないため洪積層(原資料のまま)として一括した。図中の距離0−6km間は花崗岩が第四系の下位の浅い位置に認められ、全体として基盤の上昇域と考えられるが、1.6−2.6km間は第四系の下位に花崗岩がみられず一志層群が分布する。距離1.6km付近は山口断層の南方延長に当たり、距離2.6km付近は鳥戸断層の延長に当たる。このことから、この間は断層と関連して花崗岩の分布高度が相対的に低くなり、地溝状の部分に一志層群が堆積した可能性も考えられる。一方、距離6km付近より北東側は花崗岩がみられず、東海層群が厚く堆積し、深部に一志層群が分布する。このことから、北東側が落下する断層の存在が推定される。ただし、断層の走向・傾斜は明らかではない(隣接する2点のボーリングで確認されたため、構造は特定できない)。
<F断面>:松阪市矢津町大広
阪内川の左支川小河川の上流部で、屈曲する谷沿いの断面で、花崗岩の上面に5m余りの高度差を持つ急傾斜部が認められる。この付近は、六呂木断層の北東延長に当たり、西上がりの傾向も一致することから、断層変位の可能性がある。しかし、ちょうど河川が屈曲する部分とも一致するため、河床断面の高度差が大きく投影されている可能性もあり、断層による変位とは断定しがたい。
図2−1 既存ボーリングによる基盤地質分布図 U− 5
図2−2 既存ボーリングによる基盤上面標高分布図 U− 6
図2−3 A 断 面 U− 7
図2−4 B 断 面 U− 8
図2−5 C 断 面 U− 9
図2−6 D 断 面 U− 10
図2−7 E 断 面 U− 11
図2−8 F 断 面 U− 12