分析は前処理として火山ガラスの有無を確認するため、水洗いと顕微鏡観察を行い、重鉱物分析・火山ガラスの含有率(%:全粒子における火山ガラスの数)算出と、火山ガラスの含有率の高い試料については屈折率の測定を行った(巻末)。また、ATと見られる火山ガラス1試料については、全鉱物組成分析、重鉱物分析、火山ガラス形態分類、火山ガラス屈折率測定及び写真撮影を行った(巻末)。採取試料内訳と分析結果を表2−3−6−1、表2−3−6−2、及び図2−3−3−1、図2−3−3−2に示す。
である。これらの分析結果から以下のことが言える。
@ トレンチTM1(N面−N4.5)の分析から、火山ガラスの濃集層準は明瞭とは言えず、いずれの試料からもAT由来と見られるガラスが含まれる。ただし、+1.80m以上の層準でAT由来のガラスとAh由来のガラスが混在する事から、この+1.80〜1.90mの層準でAhが降灰したと推定される。また、この層準からガラスの含有率も増える傾向がある。
A トレンチTM2(S面−S15.25)の分析から、火山ガラスの濃集層準は明確ではない。最下位の層準(+0.80〜0.85m)からAT由来と見られるガラスが含まれる。しかし、それ以外の屈折率の火山ガラス(Ahではない)も含まれるため、地層の年代をAT以降かつAh以前とは断定できない。+1.05〜1.10mではAhとAt火山灰由来のガラスの混合が見られる(すなわち、この地層の年代にAhが降灰か)。
B トレンチTM3(N面−N1.5)の分析から、+0.90〜0.95m及び+0.95〜1.00mに火山ガラス(AT相当)の濃集層準があり、AT火山灰の降灰層準と認定できる。+1.15〜1.20mでは、火山ガラス屈折率とガラスの形状から、ATとAhガラスの混合が認められる(すなわち、この層準にAhが降灰か)。
C トレンチTM3(N面−N5.5)の分析から、+1.35〜1.42m付近に火山ガラス(AT相当)が濃集しており、AT降灰層準と認定される。特に、+1.70〜1.80mはAT由来の火山ガラスのみから成る。+1.90〜2.00mはATとAhの混合が見られるので、この付近がAh降灰層準の可能性がある。
D ボーリングコアの分析から、上位から深度1.5mまでにAT由来と見られる火山ガラス(バブルウォール型、屈折率n1.50前後)が含まれ、1.5m以下のシルト(Sil)からは全く検出されない。したがって、シルトはAT降灰以前(2.2万年前以前)、暗褐色土はAT降灰以降でAh降灰以前の地層の可能性がある。
(注)*1:AT=姶良−丹沢(Tn)火山灰、南九州の姶良カルデラを噴出現とし、バブルウォール型で屈折率n1.50前後の火山ガラスを主体とする。噴出年代は2.2(−2.5)万年前。
*2:Ah=アカホヤ火山灰、南九州の鬼界カルデラを噴出現とするバブルウォール型火山ガラス。ガラスの屈折率はn1.508−1.516と高い。噴出年代は6,300年前。
表2−3−6−1 トレンチの試料によるテフラ分析
表2−3−6−2 ボーリングコアによるテフラ分析
図2−3−3−1 トレンチ壁面における火山ガラスの含有率頻度分布
図2−3−3−2 ボーリングコアにおける火山ガラスの含有率頻度分布