トレンチ掘削位置は図2−3−1のとおりである。
以下、各トレンチ場所選定の経緯と選定理由を述べる。
@ 椋本地区M1
地形的に明瞭な断層崖をなし、前年度の物理探査(浅層反射法)では大規模な撓曲構造を伴う主断層が推定されていた、地表踏査(精査)の結果でも断層崖の西側部分では大きく東側に傾斜し、東側部分ではほぼ水平に戻る構造が確認されていた。M1地区のボーリング(4本)では、断層を挟んで段丘礫層及び東海層群相当の基盤岩が大きく変位していることが確認できた。ただし、有機物を含む新期堆積物が確認されないため最終活動時期などの活動履歴を解明することが困難と思われた。
従って、当地区では段丘礫層を切る断層の有無、または撓曲構造の確認を主眼とし、場合により断層変位に伴う崩壊堆積物の検討や断層活動の認定を行うこととした。
A 椋本地区M2
地形的に比較的明瞭な逆向き低崖(水田の畦とほぼ一致)があるが、地表踏査や物理探査では明確な断層構造が把握できていなかった。そこで低崖を挟んだボーリングを実施したところ、東海層群相当の基盤岩に4.1mの東上がりの変位が認められた。しかし、当初、下盤側の上面に堆積していると予想された細粒の新期堆積物(小規模なせき止め堆積物)が捉えられず、薄い黒色土のみであったため(ボーリングBM2−1ではほとんど段丘相当の砂礫層ばかりであった)、上盤側のBM2−2では上位の土壌が人工的に削剥されたものと解釈した。
従って、当地区では基盤まで掘削して断層構造を捉えることを主眼とし、断層の活動履歴や断層活動の解明は副次的なものと考えてトレンチ掘削に着手した。
B 椋本地区M3
地形的に比較的明瞭な逆向き低崖(西側の水田と東側の畑の境界)があるが、地表踏査や物理探査では明確な断層構造が把握できていなかった。そこで低崖を挟んだボーリングを実施したところ、東海層群相当の基盤岩に4.0mの東上がりの変位が認められ、しかも、段丘礫層の上位には新期のせき止め堆積物と見られるシルトや粘土、泥炭、火山ガラス、黒色土壌が厚く堆積していた(特に下盤側)。
このため、当地区では断層構造はもちろん、段丘礫層や新期堆積物の変位量、さらに、断層の活動履歴まで解明できる可能性があるものと見て、トレンチ掘削に着手した。
図2−3−1 トレンチ調査位置図(1:2,500)