(3)活断層及び地層の変形

(1) 断層露頭

第四紀の礫層と基盤岩が逆断層で接する活断層露頭を3地点で確認した。以下に、各地点の地形・地質について説明する。

@ 亀山市安坂山町池山(露頭観察記録@)

・ 位置・地形:安楽川の上流、安楽橋の東方100mの道路下の崩壊地にある。上部は段丘礫層(中位面M1)に覆われる地表には断層変位地形は認められない。段丘の下部から湧水を伴う。

・ 地質:N6E/60Wの走向傾斜を示す。破砕帯は幅30〜40cmで灰色粘土化している。破砕帯内部 の礫は断層面に平行に伸長している。この断層は、基盤の花崗閃緑岩と鮮新世の西行谷累層の境界をなす断層である。断層が上位の段丘礫層を切っているかどうかは不明だが、地表に断層変位地形は認められない。変位量は不明だが、少なくとも20m以上と考えられる。

A 津市分部山垣内の西方(露頭観察記録A、写真3−2−20 露頭20)

・ 位置・地形:津市分部山垣内の西方の枝沢沿い標高約110m。長谷山東麓の小規模扇状地(段丘区分の中位面M2に相当)に位置し、南北方向の山麓地形境界線とほぼ一致する。断層露頭の上方は礫層に覆われ、地表面には断層崖等の変位地形は認められない。断層活動の後に、さらに新しい扇状地性礫層に覆われた可能性もあるが、本調査では断定し難い。

・ 地質:走向/傾斜N20E/44NWの断層が、扇状地礫層を約1.5m垂直変位させている。これは西側隆起の逆断層である。礫層は、亜角〜角礫、直径10〜50cm程度の花崗岩類硬質礫から成り、淘汰は悪い。断層上盤側は領家変成岩類の片麻岩、下盤側は東海層群亀山累層である。礫層中に上盤の片麻岩がクサビ状に突き出た形となっている。片麻岩は幅3m以上にわたって破砕されている。亀山累層はシルトを挟む塊状細粒砂(いずれもかなり固結)からなり、断層活動に引きずられて西に50゜逆傾斜している。この露頭は本調査地域で唯一、活断層と認定できる露頭である。

B 船山断層(露頭観察記録B、写真3−2−21 露頭21)

・ 位置・地形:安濃町草生小丸、標高80m。船山断層(Araki、1960)の位置(東端)に相当する。断層露頭では1.7m以上北上がりの変位があるが正確な変位量は不明である。また、地表では約50cm北上がりの変位地形が認められる(ただし、上盤側は変位基準となる礫層を載せておらず、人工改変されている可能性がある)。

・ 地質: N84E/54Nの走向/傾斜を示す断層によって、風化礫層が切られている。礫層は断層下盤側にのみ存在する。断層面は地表近くで緩傾斜に折れ曲がり、地表付近の土壌層で不明瞭となる。地質状況、変位地形及び条線の方向から、断層上盤側(北側)が右斜め上方へ変位した逆断層であると推定される。下盤側は一志層群三ヶ野凝灰質シルト岩砂岩層の凝灰質シルト岩及び砂岩と、それを覆う礫層(厚さ約1.7m)が分布する。上盤側は、三ヶ野凝灰質シルト岩砂岩層の塊状凝灰質砂岩からなり、この上位には段丘堆積物は認められない。したがって垂直変位量は1.7m以上ということになる。礫層は花崗岩、及びその黒色包有岩(dark inclusion)で、径1cm〜50cmの亜円礫である。礫の大部分がくさり礫であること、礫層の固結度が高いことなどから、東海層群相当の地層(例えば西行谷累層など)の風化物と考えられる。その場合は当断層は活断層とは言えない。あるいは高位段丘や見当山累層相当の比較的古い段丘堆積物である可能性も考えられるが、ここでは判断し難い。上部に風化土壌を伴う。

(2) 地層の変形

一志断層近傍と、一志断層前縁の活断層(白木断層、椋本断層、風早池断層)と間の地域では、断層運動の影響によると思われる地層の変形が認められる。

亀山市上白木の西方の一志断層を覆って分布する中位段丘堆積物は、東へ16゜傾斜する(写真3−2−22 露頭22)。

逆転層は安濃町安部の南方と同町光明寺(写真 露頭24)で確認された。いずれも鮮新世の東海層群亀山累層が逆転している。安部南方ではほぼ南北走向で西へ78゜傾斜し、光明寺では山裾から平野へ向かって、構造が〔西へ逆傾斜55゜〜直立〜褶曲〜東に緩傾斜〕と変化する。

地層の急傾斜は多くの露頭で確認された。一志断層から東へ約300mに位置する関町白木一色の南方の露頭では、東海層群西行谷累層の礫層が東へ70゜傾斜する(写真 露頭23)。