(2)地質各説

各地質について、以下に説明する。

(1) 領家変成岩類砂岩泥岩起源変成岩(Gn)

・ 分布:安濃町光明寺から津市片田長谷町の南東まで分布し、長谷山の南東部を占める。

・ 岩相:珪長質の部分と雲母質の部分とが縞状をなす縞状片麻岩である。

(2) 新期領家花崗岩類(Gr)

・ 分布:調査地では3箇所に分かれて分布する。

A 調査地北端から関町白木一色にかけての山地を構成し、分布の東縁は一志断層によって画される。

B 芸濃町忍田から安濃町草生山出にかけて、山地縁辺部に南北に分布する。

C 安濃町中山から津市の長谷山北西部にかけて分布する。南縁部は領家変成岩類に貫入し、東縁は一志断層によって画される。

・ 岩相:主として中〜粗粒の黒雲母花崗閃緑岩及び花崗岩からなる。亀山市雨引山北方及び芸濃町忍田〜安濃町山出では、角閃石を含む。一部では風化を受けマサ土となっている(写真3−2−1 露頭1)。

(3) 鈴鹿層群

関町白木一色より芸濃町忍田の北方まで南北約6kmにわたって一志断層の西側に分布する。新期領家花崗岩類を不整合に覆い、下位より筆捨礫岩層、観音山含礫砂岩層、萩原砂岩シルト岩層、石山砂岩層及び姫谷砂岩シルト岩層が北から南へと順に重なる。これらの層序関係は全て漸移整合である。上位は一志層群によって不整合で覆われる。

本層群は一志断層にほぼ平行な萩原背斜に沿って背斜構造をなし、産出貝化石に基づいて下部〜中部は淡水成、上部は浅海〜汽水成とされている(鈴木ほか、1948)。

@ 筆捨礫岩層(Mf)

・ 模式地:関町筆捨山(鈴木ほか、1948)。

・ 分布:調査地では関町鷲山の周辺に分布する。

・ 層序関係:花崗岩類を不整合で覆い、上位は観音山含礫砂岩層に漸移する。

・ 層厚:約300m。

・ 構造:萩原背斜の東翼では、ほぼ南北の走向を持ち、東へ60゜傾斜する。

・ 岩相:径5cm以下の亜円礫を主体とする淘汰の悪い礫岩で、礫はチャート・花崗岩類・砂岩などからなる。マトリックスは粗粒〜細粒砂岩である。

A 観音山含礫砂岩層(Mk)

・ 模式地:関町観音山(鈴木ほか、1948)。

・ 分布:調査地では関町鷲山の北東及び関町新所町の周辺に分布する。

・ 層序関係:下位は筆捨礫岩層、上位は萩原砂岩シルト岩層と漸移整合する。

・ 層厚:約500m。

・ 構造:萩原背斜の東側ではN−S〜NE−SWの走向を持ち、東へ40゜傾斜し、一志断層に近づくにつれ急傾斜(ほぼ垂直)となる。背斜の西翼ではNW−SE走向で、西へ20゜傾斜する。

・ 岩相:主に含礫砂岩及び礫岩からなり、砂岩やシルト岩を挟む(写真3−2−2 露頭2)。含礫砂岩及び礫岩は、径数cm以下の亜角〜亜円礫を含む。礫率は5〜30%程度で、チャート礫を主とする。マトリックスはアルコース質な中〜極粗粒砂岩からなり、新鮮面では淡灰色を示す。弱いインブリケーションが発達する場合があり、泉ヶ丘団地南方の露頭では斜交層理が認められる。

砂岩はアルコース質細〜中粒、シルト岩は塊状灰白色で、それぞれ10cm〜数mの厚さで礫質層に挟まれる。

B 萩原砂岩シルト岩層(Sg)

・ 模式地:関町萩原南西の萩原谷下流(鈴木ほか、1948)。

・ 分布:調査地では関町萩原周辺に分布し、中川河床に良好に露出する。

・ 層序関係:下位の観音山含礫砂岩層に整合し、上位の石山砂岩層に漸移する。また、一志層群の忍田礫岩層に不整合で覆われる。

・ 層厚:約600m。

・ 構造:大局的には、ほぼ東西の走向を持ち南へ12〜36゜傾斜する。下位の観音山含礫砂岩層と同様に、萩原背斜近傍の東翼ではN−S〜NE−SWの走向を持って東へ傾斜し、西翼ではNW−SE走向で北西に傾斜する。

・ 岩相:下部は細粒〜シルト質砂岩、上部でアルコース質細〜中粒砂岩となる。厚さ数mm〜数mのシルト岩を挟み、一般的に層理面が良好に発達する(写真3−2−3 露頭3)。また、一部では平行葉理が発達し、上部では亜炭層を挟む。

C 石山砂岩層(Si)

・ 模式地:芸濃町石山観音(鈴木ほか、1948)。

・ 分布:模式地周辺に分布する。

・ 層序関係:下位の萩原砂岩シルト岩層に整合で重なり、上位の姫谷砂岩シルト岩層に漸移する。また、一志層群の忍田礫岩層に不整合で覆われる。

・ 層厚:200〜250m。

・ 構造:萩原背斜の西翼では、NW−SEの走向を持ち南西へ約40゜傾斜する。

・ 岩相:塊状アルコース質細〜中粒砂岩からなる。新鮮面では灰白色、風化面で褐色を示す。

D 姫谷砂岩シルト岩層(Sh)

・ 模式地:芸濃町姫谷上流(鈴木ほか、1948)。

・ 分布:芸濃町鈴鹿ゴルフ場内に分布する。

・ 層序関係:下位の石山層に漸移整合し、上位は一志層群の忍田礫岩層によって不整合で覆われる。

・ 層厚:約250m。

・ 構造:NNW−SSEの走向を持ち、萩原背斜の東翼では東へ、西翼では西へ20〜50゜傾斜する。また最上部は背斜構造の影響を受けず、ほぼ東西走向で南へ30゜傾斜する。

・ 岩相:シルト岩〜砂質シルト岩及び細粒砂岩からなる。

(4) 一志層群

下位の花崗岩類・変成岩類及び鈴鹿層群を不整合に覆い、関町萩原から調査地南端まで分布する。本層群の最下部は、地域毎に岩相の異なる地層が局所的に分布する。関町萩原〜芸濃町雲林院には忍田礫岩層及び市場砂岩シルト岩層、安濃町草生周辺には神子谷礫岩層及び草生砂岩シルト岩層、安濃町中川竜合には家所砂岩層が局所的に分布する。これらの上位に三ヶ野凝灰質シルト岩砂岩層、茶屋砂岩泥岩層及び薬王寺泥岩砂岩層が順に重なる。

@ 家所砂岩層(Ii)

・ 模式地:美里村家所の辰水郵便局から辰水神社一帯(吉田ほか、1995)。

・ 分布:調査地では安濃町中川竜合にのみ分布する。

・ 層序関係:下位の花崗岩類を不整合に覆い、上位は三ヶ野凝灰質シルト岩砂岩層に漸移する。

・ 層厚:0〜40m。

・ 構造:塊状無層理のため不明。

・ 岩相:細〜中粒アルコース質砂岩からなる。

A 忍田礫岩層(Is)

・ 模式地:芸濃町安濃川河床(吉田ほか、1995)。

・ 分布:関町萩原から模式地まで、南北約3kmにわたり分布する。

・ 層序関係:模式地では花崗岩類を、模式地以北では鈴鹿層群の萩原砂岩シルト岩層、石山砂岩層及び姫谷砂岩シルト岩層を不整合で覆う。上位は模式地周辺で市場砂岩シルト岩層に漸移するが、芸濃町忍田の二重池以北では東海層群の西行谷累層によって不整合で覆われる。

・ 層厚:0〜40m。

・ 構造:周辺の地層から、NNW−SSE走向で東へ30〜40゜傾斜すると推定される。

・ 岩相:主として礫岩からなり、粗〜極粗粒砂岩を挟む。礫岩は淘汰が悪く、径数cm〜1m程度の亜角〜亜円礫を含む。礫はチャートや泥岩起源のホルンフェルスが卓越する。マトリックスはアルコース質砂岩からなる。

B 神子谷礫岩層(Id)

・ 模式地:安濃町草生神子谷(吉田ほか、1995)。

・ 分布:安濃町草生の西方に基盤凹地を埋積するように分布する。

・ 層序関係:下位は花崗岩類にアバットする。上位は草生砂岩シルト岩層に漸移する。

・ 層厚:50m以下。

・ 岩相:淘汰の悪い礫岩からなる。亜角〜亜円、径数cm〜1m以上の巨礫を含み、礫種は花崗岩類を主体とする。マトリックスは花崗岩質の粗粒砂岩からなる。

C 市場砂岩シルト岩層(Ib)

・ 模式地:芸濃町雲林院市場の安濃川(吉田ほか、1995)。

・ 分布:芸濃町忍田の二重池〜同町雲林院の西方に分布する。

・ 層序関係:芸濃町雲林院の西方では花崗岩類を不整合で覆い、上位は三ヶ野凝灰質シルト岩砂岩層に漸移する。模式地以北では下位の忍田礫岩層に整合で重なり、上位は東海層群の西行谷累層によって不整合で覆われる。

・ 層厚:0〜100m以上と推定される。

・ 構造:二重池付近では、ほぼ南北の走向を持ち東へ34゜傾斜する。

・ 岩相:模式地では、シルト岩優勢の砂岩シルト岩互層からなり、凝灰岩層を2枚挟む。

D 草生砂岩シルト岩層(Ik)

・ 模式地:安濃町草生山出から思仲寺の西方にかけて(吉田ほか、1995)。

・ 分布:模式地周辺に分布する。

・ 層序関係:下位の神子谷礫岩層に漸移整合に重なり、安濃町草生山出付近では花崗岩類を不整合で覆う。上位は三ヶ野凝灰質シルト岩砂岩層に漸移する。

・ 層厚:0〜50m。

・ 岩相:砂岩を主とし、シルト岩や礫岩を挟む。単層の厚さは数十cm〜数m程度で、全般に淘汰が悪い。

E 三ヶ野凝灰質シルト岩砂岩層(Im)

・ 模式地:白山町三ヶ野から二本木間の道路沿い(Araki、1960)。

・ 分布:調査地では、芸濃町忍田から津市片田長谷町の南方までの盆地縁辺部に分布する。

・ 層序関係:芸濃町雲林院付近では下位の市場砂岩シルト岩層に整合で重なり、安濃町草生付近では下位の草生砂岩シルト岩層から漸移する。また、安濃町中川竜合では家所砂岩層に整合で重なる。これら以外の地域では、領家帯基盤岩を直接不整合で覆う。上位は津市片田長谷町の南方で茶屋砂岩泥岩層に漸移する。また芸濃町小野平周辺では、東海層群の西行谷累層によって不整合で覆われる。

・ 層厚:堆積盆地主部では600〜750mと推定されるが、調査地に露出するのは約250mである。

・ 構造:安濃町安部西方に伸びる東西系の船山断層を境界とし、本層の構造は変化する。船山断層以北では、ほぼ南北(NW−SE〜NE−SW)走向で東へ10〜60゜傾斜する。断層以南では大局的にほぼ東西の走向を持ち、南へ10〜30゜傾斜する。一方、一志断層近傍では、一志断層にほぼ平行な走向で急傾斜となり、安濃町中川の西方では58゜西傾斜の逆転構造を示す。

・ 岩相:凝灰質細〜中粒砂岩を主とし、一部で細礫を含み、凝灰質シルト岩を挟む。本層全体を通して非常に凝灰質である。砂岩には大部分で幅数cm単位の層理面が良好に発達する。新鮮面では灰〜青灰色を示し、風化部では黄褐色〜赤褐色を示し玉葱状構造が見られる場合がある(写真3−2−4 露頭4)。また安濃町の採土場では砂岩中に生痕化石が密集する様子が確認できる(写真3−2−5 露頭5)。

F 茶屋砂岩泥岩層(Ic)

・ 模式地:久居市稲葉町茶屋の伊賀街道(Araki、1960)。

・ 分布:調査地では津市片田長谷町の南方及び久居市森工業団地周辺に分布する。

・ 層序関係:下位の三ヶ野凝灰質シルト岩砂岩層に漸移整合で重なり、上位は薬王寺泥岩砂岩層に漸移する。

・ 層厚:約100m。

・ 構造:大局的には分布の中心部(津市片田町)に向かって緩やかに傾斜し、半すり鉢状の構造を示す。しかし傾斜が10〜28゜と緩いため、走向は安定しない。

・ 岩相:細粒砂岩、塊状シルト岩及び砂岩シルト岩互層からなる(写真3−2−6 露頭6)。砂岩は新鮮面でオリーブ灰色、シルト岩は灰白〜暗灰色を示す。

G 薬王寺泥岩砂岩層(Iy)

・ 模式地:津市片田の薬王寺町から片田町間の伊賀街道(Araki、1960)。

・ 分布:調査地では津市片田久保町の北方から久居市戸木町の風早団地まで分布する。

・ 層序関係:下位の茶屋砂岩泥岩層に漸移整合で重なり、上位は東海層群の小山累層に不整合で覆われる。

・ 層厚:約450m。

・ 構造:本層下部では下位の茶屋砂岩泥岩層と同様、分布中心部に向かって緩やかに傾斜する。しかし、中〜上部では一志断層にほぼ平行な走向となり、傾斜が次第に急になる(40〜50゜)。さらに、一志断層の東側(風早池付近)では傾斜が90゜となる。

・ 岩相:主に砂岩シルト岩互層からなり、一部で塊状シルト岩や細粒砂岩が卓越する。砂岩シルト岩互層は、細粒砂岩、極細粒砂岩及びシルト岩からなる互層で、単層の厚さは10〜60cm程度である(写真3−2−7 露頭7)。塊状シルト岩は津市片田町や久居市戸木町周辺に見られ、新鮮面で暗灰色、風化面で淡黄褐色を示す。細粒砂岩は久居市戸木町の蛇川沿いに見られ、石灰質団塊やシルト岩のブロックを含む。

(5) 東海層群

伊勢湾を取り巻く地域に、固結度の低い礫層・砂層・泥層が広く分布する。これらは濃尾平野を隔てて地域ごとの名称で呼ばれてきたが、濃尾平野の地下にも伏在しており、一つの堆積盆に形成された地層群であることがわかった。この堆積盆地は東海湖盆と呼ばれ、その堆積物は東海層群と呼ばれている。

東海層群は岐阜県の東濃地域・濃尾平野東部・濃尾平野地下・知多半島・伊勢湾西岸に分布する。濃尾平野より東では瀬戸層群、知多半島では常滑層群、本調査地域の伊勢湾西岸では奄芸層群と呼ばれ、これらはまとめて東海層群と呼ばれる。

本層群は南部ほど下位の層準が露出しており、伊勢湾西岸地域は下部から中部層が分布する。最下部層は中新統最上部、下部層は下部鮮新統、中部層は上部鮮新統と考えられ(牧野内、1983)、上部層は鮮新統最上部、最上部層は下部更新統と考えられている。従って、東海層群は、ほぼ鮮新世前期に相当する。

東海層群はその層相から、湖沼成〜河川成堆積物と考えられ、泥・シルト・砂・礫から構成されている。調査地域には小山礫層・西行谷礫層・楠原累層・亀山累層が分布する(和田、1977、1982;宮村ほか、1891;吉田、1987、1990、吉田ほか、1995)。全体としては北東傾斜で、北東ほど上位の地層が分布する。一志断層とこれに平行する活断層によって挟まれる地域では、地層の急傾斜や逆転が認められる。各層準の層相等の詳細については後で述べる。

楠原累層や亀山累層からは火山灰層が確認されており(吉田、1987;吉川・吉田、1989)、楠原累層・亀山累層中に含まれる阿漕火山灰層は約460万年、亀山累層の寺川火山灰層は約370万年のフィッショントラック年代が得られている。

本調査地域では、楠原累層・亀山累層からは象化石(Stegodon cf elephantoides)、スッポンの化石(Trionyx miensis)、淡水生貝化石(Cristaria、Anodonta、Viviparusなど)、魚類化石(コイ科のDistoechodos、Gyprinus、Carassius)、大型植物化石等が産出する。

@ 小山累層(To)

・ 模式地:一志町小山(吉田ほか、1995)。

・ 分布:調査地では、一志断層近傍の津市片田志袋町の浄水場付近と片田団地〜佐倉池付近に分布する。

・ 層序関係:下位は一志層群薬王寺泥岩砂岩層を不整合で覆い、上位は西行谷累層と楠原累層を欠き、亀山累層が整合で重なる。

・ 層厚:約120m。

・ 構造:一志断層にほぼ平行な走向(N−S〜NNW−SSE)を持ち、東へ42〜60゜傾斜する。

・ 岩相:礫岩からなり、一部に砂岩やシルト岩を層状またはレンズ状に挟む(写真3−2−8 露頭8)。礫径5cm以下の亜円〜円礫を主体とし、礫率は70%程度である。礫種はチャートが大部分を占め、この他に砂岩や頁岩のホルンフェルス、溶結凝灰岩を含む。マトリックスはルーズな細粒砂である。

A 西行谷累層(Ts)

・ 模式地:芸濃町楠原の西方の西行谷上流(赤嶺ほか、1951)。

・ 分布:調査地北端から安濃町草生仲之郷まで分布する。

・ 層序関係:下位は関町萩原から芸濃町小野平にかけて、一志層群の忍田礫岩層、市場砂岩シルト岩層及び三ヶ野凝灰質シルト岩砂岩層を不整合で覆う。調査地北部では一志断層を境界として花崗岩類と接する。上位は楠原累層及び亀山累層が整合で重なる。

・ 層厚:調査地北端の亀山市の安楽川沿いで最も厚く約280m。南方へ向かって徐々に層厚を減じ、安濃町草生仲之郷付近で尖滅する。

・ 構造:一志断層近傍で、断層にほぼ平行な走向を持ち、東へ52〜90゜傾斜する。

・ 岩相:礫からなり、一部砂やシルトを挟む(写真3−2−9 露頭9)。礫は比較的淘汰の良い亜円〜円礫、細〜中礫を主体とする。チャート礫が最も多く、この他に溶結凝灰岩や砂岩頁岩起源のホルンフェルスを含む。マトリックスは粗〜細粒砂である。砂やシルトは厚さ1m以下で、層状またはレンズ状に挟まれる。

B 楠原累層(Tu)

・ 模式地:芸濃町楠原の西方の西行谷中流(赤嶺ほか、1951)。

・ 分布:西行谷累層の東側に南北方向、帯状に分布し、安濃町戸島の西方で尖滅する。なお本調査では以下に示す理由から関町楠原以北の楠原累層を亀山累層に含めた。

A 本層と上位の亀山累層との境界が「亀山」図幅で図示されていない

b 両層は一連の堆積物で岩相の特徴も共通する

c 楠原累層は北方へ向かって層厚を減ずる

・ 層序関係:下位の西行谷累層、上位の亀山累層と一連整合である。

・ 層厚:模式地周辺で最も厚く200〜300m、南北に向かって層厚を減ずる。

・ 構造:本層は一志断層と前縁の活断層に挟まれて分布するため、断層にほぼ平行な走向(N−S〜NNW−SSE)を持ち、50〜80゜急傾斜する。

・ 岩相:砂、シルト及び礫などからなる。しばしば厚さ数cmの亜炭層を挟み、炭質物の破片を含む(写真3−2−10 露頭10)。シルトは新鮮面で青灰色〜暗灰色を示し、一般に塊状でやや砂質である。砂は細〜中粒で、固結度がやや低い。

C 亀山累層(Tk)

・ 模式地:亀山市付近(赤嶺ほか、1951)。

・ 分布:調査地北南から南端まで、一志断層の東側に南北方向、帯状に広く分布する。

・ 層序関係:下位の小山累層、西行谷累層及び楠原累層と漸移整合する。上位は段丘堆積物などの未固結層によって不整合に覆われる。

・ 層厚:最大層厚1500m以上と推定される。調査地には亀山累層の下部が分布する。

・ 構造:一志断層近傍及び一志断層と前縁の活断層に挟まれる地域では、断層にほぼ平行する走向(N−S〜NNW−SSE)を持ち、東へ40゜〜90゜傾斜し、安濃町中川や光明寺周辺では逆転して西へ78〜55゜傾斜する。前縁の活断層の東側や、(前縁の活断層が存在しない地域の)一志断層から数百m離れた地点では構造が急変し、ほぼ水平〜20゜程度の緩傾斜となる。

・ 岩相:主としてルーズな細粒砂、砂質シルト、及びそれらの互層からなる(写真3−2−11写真3−2−12 露頭11、12)。砂岩は比較的淘汰の良い細〜中粒砂岩で、一部では弱い平行葉理が発達する。新鮮面では灰〜暗灰色、風化すると黄褐色〜明褐色を示す。シルトと互層をなす部分では、しばしば級化層理が確認される。県立久居高等学校の西方では、葉理の発達した砂が礫を伴って下部層を削り込む構造が認められる。シルトは一般に塊状砂質で、新鮮面で暗灰色〜青灰色、風化面では淡黄褐色を示す。また、砂と互層をなす部分では細かな平行葉理が発達する。シルト質な地層も挟まれ、安濃町中川の東方や津市野田の赤池南方では、暗灰色塊状シルトに貝の印象化石が含まれている。本層には灰白色の凝灰岩である阿漕火山灰層が挟在する。また、津市では主に粘土層からなる片田粘土層が挟在する。

C' 片田粘土層(Tkk)

・ 模式地:津市片田田中町の高塚丘陵西縁部(吉田、1987)。

・ 分布:安濃町妙法寺から津市片田田中町まで分布する。

・ 層序関係:亀山累層最下部に挟まれる部層である。

・ 層厚:20〜40m。

・ 構造:岩田川以北ではほぼ南北の走向を持ち東へ4〜20゜傾斜し、岩田川以南ではほぼ東西走向で北へ極緩やかに傾斜する。

・ 岩相:無層理塊状の粘土からなり、風化すると小片状に砕ける特徴を持つ。

(6) 見当山累層(K)

・ 模式地:津市一身田大古曽の見当山(荒木、1953)。

・ 分布:調査地では亀山市白木町の白川神社周辺にのみ分布する。

・ 層序関係:丘陵頂部で東海層群の亀山累層を傾斜不整合で覆う。

・ 層厚:最大20m。

・ 層相:径2〜30cmの亜角〜亜円礫を含む礫層である(写真3−2−13 露頭13)。礫はチャートや砂岩泥岩起源のホルンフェルス、花崗岩類などからなり、花崗岩類の礫は風化している。マトリックスは明褐色粘土である。

(7) 段丘堆積物

本地域には布引山地を源流として鈴鹿川、安濃川、雲出川などの河川が東流する。これら主要河川沿いには比高の異なる段丘面が多数形成されている。各段丘面は沖積面との比高に基づき、表2−2−2、地形面対比表のように区分した。地質図では、段丘面を大きく低位・中位・高位の3区分とした。

@ 高位段丘堆積物(H)

・ 分布:丘陵頂部に平坦面を形成して点在し、特に久居市において広く分布する。

・ 層厚:10m以下。

・ 層相:砂礫層を主とし、一部で細粒砂やシルトを挟む。亜円〜亜角の中〜大礫を主体とし、マトリックスは粘土質の場合が多い(写真3−2−14 露頭14)。低位・中位段丘堆積物と比較して礫径が大きく、淘汰が悪い。礫種は花崗岩類、チャート、砂岩泥岩起源ホルンフェルスなどからなり、くさり礫を含む。

A 中位段丘堆積物(M)

・ 分布:鈴鹿川、安濃川、雲出川の各主要河川沿いに広い平坦面を形成して分布する。また、山地近傍の亀山市前田川沿いや椋川沿いにも小規模に点在する。

・ 層厚:10m以下。

・ 層相:主要河川沿いに分布する中位段丘堆積物は、細〜中礫、亜円〜円礫を主体とする礫層である(写真3−2−16写真3−2−17 露頭16、17)。礫種は高位段丘堆積物とほぼ同じで、花崗岩類、チャート、砂岩泥岩起源のホルンフェルス等からなる。礫含有率が高く、硬質礫が多い。マトリックスは細〜中粒砂で、花崗岩質の場合がある。一方、山地近傍に分布する中位段丘堆積物は、礫の円磨度が低く、マトリックスが粘土質で扇状地性の層相を示す(写真3−2−15 露頭15)。

B 低位段丘堆積物(L)

・ 分布:調査地の主要河川沿いに分布する。

・ 層厚:0.5〜4m。

・ 層相:径2〜30cmの亜円〜円礫を含む礫層からなる(写真3−2−18 露頭18)。礫種は花崗岩類、砂岩泥岩起源のホルンフェルス、片麻岩などで、硬質礫からなる。マトリックスは細〜中粒のルーズな砂で、しばしば花崗岩質である。

(8) 新期扇状地堆積物(f)

・ 分布:芸濃町雲林院と野平、安濃町阿部などに分布する。

・ 層厚:最も厚い部分では10m以上と見られる。

・ 層相:亜角〜角礫を含む淘汰の悪い礫層からなり、径10〜50cm程度の礫を多く含む。礫種は花崗岩類、片麻岩、新第三系の堆積岩類などからなり、マトリックスは粘土質砂である。調査地の新期扇状地は、花崗岩山地の谷の出口付近に多い。

(9) 沖積層(a)

・ 分布:主要河川沿いに分布する。

・ 層厚:数m。

・ 層相:主に砂礫層からなる。沖積層は、谷底平野堆積物、氾濫原堆積物、扇状地堆積物、自然堤防堆積物などからなる。