布引山地は南北に連なる鈴鹿山脈の南に位置し、山地の東縁は一志断層で境され、比高数百mの急崖を形成している。山地の東側では、東へ緩く傾斜する扇状地性の段丘面が発達し、丘陵地を形成している。調査地域の河川は北から順に、安楽川、前田川、鈴鹿川、安濃川、雲出川で、北西から南東へ、もしくは西から東へ流下し、河川沿いには沖積面が発達する。
調査地の主要河川沿いには、K面(見当山累層堆積面)、比高の異なる6段の段丘面*1(H1、H2、M1、M2、L1、L2)及び沖積面が分布する。これらのうちM1〜L2及び沖積面は調査地全域に分布し、特にM1、M2は広い平坦面を形成する。一方、H1〜H2は分布域が限られている。H1は鈴鹿川北岸流域と椋川流域、安濃川南岸、雲出川北岸流域に分布する。H2は前田川沿い、安楽川、鈴鹿川流域、及び生水川流域の一部に点在し、さらに、雲出川北岸流域にも分布する。
調査地に見られる断層変位地形は、主に山地と丘陵の境界部に位置し、西上がりで南北方向のものが多い。これは、ほぼ一志断層に相当する。また、これからやや東に離れて、亀山市白木町、芸濃町椋本、安濃町戸島、久居市森及び風早池東方では、段丘面に明瞭な変位が認められる。これらの変位地形はほぼ南北方向〜北東−南西方向、多くは西上がりで、各々、一志断層、白木断層、椋本断層、戸島西方断層、庄田断層、及び風早池断層に対比される(活断層研究会編、1991;吉田ほか、1995;宮村ほか、1981)。