3−3−2 平均変位速度の分布からみた起震断層の評価

前述のように鉛直平均変位速度(図3−1−3−1参照)の変化は、大局的には菰野町田光、朝明川、湯の山付近をピークとして、北は藤原町山口、南は亀山市前田川付近で収斂するような傾向である(前田川とその北側の測定地点である、山本町までの間はかなりブランクがある)。断層系として見た場合、菰野町田光付近で前縁断層系の平均変位速度が急速に減少し、反面、境界断層系の平均変位速度が活発になる傾向が読みとれ、前縁断層系と境界断層系の活動の境界が予想される。すなわち、田光付近で境界断層系から前縁断層(あるいはその逆)への「乗り移り」が想定され、前縁断層系と境界断層系は断層活動としては、同一に活動することが示唆される。つまりセグメント区分は異なってもひとつにグルーピングが可能であると思われる。その場合の断層延長は、藤原町山口から鈴鹿市御幣川と亀山市前田川の中間付近の約33km〜34kmである。

活断層の活動期について、太田・寒川(1984)では境界断層の大部分は第四紀中期にほとんど活動を停止し、前縁断層系に活動の中心が移ったが、一部活動が継続している境界断層系もあり、その箇所では前縁断層系の活動への移り変わりはないと指摘している。ただし境界断層系と前縁断層系の同一の活動に関しては言及していない。