平均変位速度を求めるための地形面の形成年代値は、M2面については太田・寒川(1984)による約5万〜約8万年を、L1面については、今回の年代資料の結果を検討して、約2万年〜約3万年を採用した。その他の地形面の年代については、太田・寒川(1984)に準じた。
地形測量の測定点の位置は、藤原町山口が起点で順次南側にトレースされ、菰野町田光付近までが前縁断層系に沿っており、菰野町切畑付近から湯の山測点を経て亀山市の前田川沿いまでが境界断層系に沿っている(2−5項の地形測量調査での図2−2−5−1参照)。境界断層系と前縁断層系の変位速度を年代ごとに算出し、鉛直平均変位速度は図3−1−3−1に、平均剪断面変位速度は図3−1−3−2にそれぞれ示した。
各平均変位速度と測定点の位置の関係から次のようなことが推定される。
@ 図3−1−3−1の鉛直平均変位速度は、前縁断層系と境界断層系をあわせて検討した場合、ほぼ菰野町田光、朝明川、湯の山付近をピークとして、北は藤原町山口、南は亀山市前田川上流部で収斂するような傾向が現れた。ただし、前田川までとその手前の測定点との間は測定点数が少ない。藤原町東禅寺〜大安町宇賀川付近では、鉛直平均変位速度は、0.05〜0.3m/1000y、菰野町田光〜湯の山では、0.1〜0.4m/1000y、内部川から南では、0.05〜0.2m/1000yである。これらの値は、表3−1−3−1に示した太田・寒川(1984)での平均変位速度と同様の範囲の値を示す。
A 図3−1−3−2の平均剪断面変位速度は、前縁断層系では断層面で推定した角度と年代の組み合わせから最小及び最大の平均剪断面変位速度を求めた。境界断層系では断層面の角度は一定で、年代の違いから最小、最大の平均剪断面変位速度を求めた。図3−1−3−2での前縁断層系の平均剪断面変位速度は、断層面の角度や年代の巾に応じてかなりの範囲を示す結果となった。
一方、境界断層系では断層面の角度が急傾斜で同じ値を採用したため、鉛直平均変位速度と著しく異なってはいない。平均剪断変位速度全体の傾向は、藤原町東禅寺〜大安町宇賀川付近では、0.1〜0.8m/1000y、菰野町田光〜湯の山では、0.1〜1.0m/1000y、内部川から南では、0.05〜0.2m/1000yである。
計算結果は表3−1−3−2に境界断層系を、また前縁断層系の各角度ごと、年代ごとの計算結果は、表3−1−3−3(鉛直平均変位)及び表3−1−3−4(平均剪断面変位)に示した。
図3−1−3−1 鉛直平均変位速度(L1面=20,000〜30,000年)角度20°〜45°
図3−1−3−2 平均せん断面変位速度(L1面=20,000〜30,000年)角度20°〜45°
表3−1−3−1 鈴鹿山脈東麓地域における活断層資料
表3−1−3−2 平均変位速度計算表(境界断層系)
表3−1−3−3 平均変位速度計算表(前縁断層系、鉛直変位)
表3−1−3−4 平均変位速度計算表(前縁断層系、剪断面変位)