極浅層反射法探査は、図2−3−4−1に示したように大安町の石榑北山周辺で実施した。探査延長は、約200m以上である。調査結果は、マイグレーション前後の時間断面図(図2−3−4−2〜図2−3−4−3)及びマイグレーション前後の深度断面図(図2−3−4−4〜図2−3−4−5)に示した。また後述するボーリング結果も考慮し、地質的な解釈を地質解釈図(図2−3−4−6)に示した。
地質的な解釈結果は、次のようである.
1) 測線に沿って東西方向に認められる明瞭な反射面は、AMB−3孔とAMB−4孔のボーリングコアから判断すれば、シルト層もしくはシルト優勢層と砂礫層等の密度の違いが現れているところであると思われる。それは、AMB−3孔での深度3〜4m付近で砂礫層から硬質のシルト層になるところや、AMB−4孔での深度9mや14m付近で砂礫層からシルト層もしくはシルト優勢層に変わるところである。
2) 東海層群と上位の中位段丘堆積物相当層の境界は、同じ様な砂礫層であるため、明瞭な反射面がでていない。同様に、中位と低位の段丘堆積物の境界もさほど明瞭でない。
3) 断層に関しては、AMB−3孔付近で、撓曲した反射面がみられる。同時に推定している断層線の位置付近で、断層の下盤側がややせり上がるような反射面が現れている。ただし、反射面そのものが切れていると明確には判断できない。推定した断層面の傾斜は約25゜である。より西側では、逆向き断層が想定できる反射面のずれがみられる。この位置から150m程度西側では、逆向き断層の露頭も確認されており、このずれは逆向き断層の派生的な影響を受けている可能性も考えられる。
図2−3−4−1 探査測線位置図
図2−3−4−2 時間断面図(マイグレーション前)
図2−3−4−3 時間断面図(マイグレーション後)
図2−3−4−4 深度断面図(マイグレーション前)
図2−3−4−5 深度断面図(マイグレーション後)
図2−3−4−6 地質解釈図
(2) 大深度反射法探査
大深度反射法探査は、図2−3−4−7に示した測線位置で探査を行った。
調査結果は、表層構造図(図2−3−4−8)及び各断面図として、速度構造図(図2−3−4−9)、CMP重合断面図(図2−3−4−10)、時間マイグレーション断面図(図2−3−4−11)、深度断面図(図2−3−4−12−1、図2−3−4−12−2)を示した。各断面の結果は次のようである。
1) 調査結果
@ 表層構造図
この図はタイムターム法と呼ばれる屈折波解析によって求めた結果である。最上位の図は、各受振点のタイムターム値を示したもので、低速度層の厚いところで大きな正の値となっている。中央の図は、表層(最上部層;風化層もしくは表土層が対象)の速度を1000m/secに仮定して求めた表層基底層の速度を示している。西側で4000m/secを越える速度となっており、東側ほど徐々に速度値は減少し、東端では2000m/sec程度である。最下位の図は、表層構造図であり、実標高と表層の厚さが示されている。Loc.No.400付近で表層が厚く、それより西側のLoc.No.500付近までとLoc.No.200付近までは、表層部がかなり薄いか、ほとんどない。
A 速度構造図
反射法の処理の過程で得られたもので、図中に示した等速度線は重合速度に基づいている。大局的には、ところどころに速度変化はあるが、西側で地表付近から4000m/sec近い速度値を示し、東に向かうにつれ急激に速度が遅くなっていく。
B CMP重合断面図
高周波のノイズを低減させる帯域通過フィルターを施して2秒まで表示してある。
C 時間マイグレーション断面図
マイグレーションにより重合断面図の中での傾斜した構造は、正しく修正され、中央部より西側の構造が明確化した。
D 深度断面図
時間マイグレーション断面図を速度構造に基づき深度領域に変換したもので、深度4kmまで表示した。用いた速度構造は、速度構造を測線方向に平滑化したものである。図面の縦横比は1:1で、図中の傾斜角は実際の傾斜角に対応する。
2) 解釈
深度断面に基づく解釈は、速度値からみた解釈図(図2−3−4−13)を示した。地質資料との対比等から次のような解釈が想定される。
@ 大局的には、反射波境界は図のようにA〜Gの7つの境界が認められる。
A 下位よりG面は、主に中・古生界の中の地層境界か、あるいは宇賀川から南側で中・古生界を貫いている花崗岩類との境界(ここでは貫いていない)である可能性も考えられる。ただし現状では、はっきりした証拠は得られていない。
B F面は、基盤(中・古生界)とその上位層の境界面の可能性がある。より東側では、その面の反射は、比較的明瞭である。F面も含めた上位への反射面は、Loc.No.200を境に西と東で反射面の構造が大きく異なり、東ではほとんど水平か、もしくは西へ緩く傾斜し、西では40°程度の東傾斜を示す反射面となる。これは、地表でみられる東海層群の地質構造に類似する。
C 速度値からみれば、概ねF面から上位は3.5km/secよりも遅い。調査地周辺での屈折法の弾性波探査記録では、表2−3−4−1のような速度値が得られている。
表2−3−4−1での速度値のうち基盤速度値は、概ね今回の結果に対応する可能性が高い。今回の記録のうち、速度値では3.0〜3.5km/sec層がどの地層に対応するのかが問題である。3.0km/secの速度値までは、東海層群に対応し3.2km/sec〜3.5km/secのものが中新統(千種層?)に対応できると思われるが、その速度層の層厚は、2〜300m程度であり、すべて中新統に対比できるか今後の検討課題である。
D 断層の反射面は、反射面としては実際には不明瞭であるが、速度値の変化から、例えばLoc.No.200付近で、F面以上では、反射面の構造が変化するだけでなく、同深度の速度値はあきらかに西側が速く、東側が遅い値をとっており、西上がりの断層を示唆している。Loc.No.400付近では、新町断層があり、それに対応するような逆向きの速度値のずれが認められる。Loc.No.420付近では、地表の地質露頭で基盤岩と東海層群の高角な逆断層が認められるが、反射面では不明瞭である。総合的な解釈は、3章の総合解析で後述する。