一般的な調査は、鈴鹿東縁断層帯及びその周辺地域についての地形面区分、地質層序の確立、地下地質構造の把握のための基礎資料収集等を行い、活断層については、その有無 、分布、周辺の表層地質、破砕帯等の確認を、また物理探査、ボーリング調査及びトレンチ調査候補位置の選定、年代測定のための試料採取等を目的とした。
(2) 調査範囲
空中写真による地形判読(160km2)及び地質概査(80km2)の範囲は、前述の図1−2−3−1に示した(他の調査項目地点も含む)。これらの調査を基に地質精査範囲を以下の5地域に選定した(精査範囲:16km2以上)。精査範囲は、主にその後のボーリング調査やトレンチの候補地の可能性がある地域を選定した。航測図化は、米軍写真を利用して1/2,500縮尺で1mコンターの地形図を作成し、人工改変による影響以前の地形状態を再現した(1km2の地域を5箇所程度)。地形測量は、ほぼ前縁断層系及び境界断層系に沿ってそれらを横断するように実施した(約延長10km)。
《青川地域》
この地域は前縁断層系が最も明瞭な地域であり、さらに鈴鹿山脈と平野を境する境界断層との間に、逆向き断層等が数本認められる地域である。また、地質露頭での断層付近には撓曲構造が認められる。この地域内には、青川上、青川中、青川中’及び青川下地点のボーリングやトレンチ地点がある。青川沿いでは、大深度反射法探査、源太川左岸沿いでは極浅層反射法探査を実施した。この地域では航測図化を2地区で実施した。
《宇賀川地域》
この地域では、前縁断層系の変位地形が連続する。沖積面と中位面を境する崖が断層崖かつ侵食された崖であるが、その地点付近を除いては、変位地形は連続性に欠ける。この地域では、宇賀川トレンチ及び中位面でのボーリング調査を行った。また、航測図化を1地区で実施した。
《田光地域》
この地域では、前縁断層系の変位地形が連続する。明瞭な前縁断層系のほぼ南限であり、低位面にほぼ南北方向の変位地形が数本認められる。田光川沿いでは侵食崖の箇所もあり、地形的に確定できなかったのでトレンチは実施しなかった。低位面でボーリング調査を行った。この地域では航測図化を1地区で実施した。
《湯の山地域》
境界断層系が連続し、低位面に変位地形がほぼ南北方向に認められる。この地域の南北側には明瞭な高角逆断層が認められる。巨礫が表層に分布し、施工性が悪いためトレンチは実施しなかった。この地域では航測図化を1地区で実施した。
《水沢地域》
境界断層系が空中写真判読等で不明瞭な地域である。比高2m程度の低崖が連続性には乏しいが認められる。断層の南縁への連続性を検討するために精査地域として選定した。
(3) 調査実施期間
〈地形判読〉平成8年4月15日〜9月30日
〈地質概査及び精査〉平成8年5月13日〜5月30日
〈航測図化〉平成8年8月1日〜11月30日
〈地形測量〉平成8年8月26日〜10月13日
(4) 委員及び担当者
鈴木 康弘委員(理学博士)(地形測量担当)
神田 淳男(技術士:応用理学)
松本 俊幸(技術士:応用理学)
堤 昭一
白井 一也
平賀 開
鈴木 英雄
益子 雄一
槙田 祐子
(5) 調査方法
1) 空中写真による地形判読
鈴鹿東縁断層帯の調査地域について、実体視用空中写真による地形判読を実施した。空中写真の縮尺は1/10,000を基本とし、段丘面の分類、断層変位地形等の抽出を行った。この結果を総合し、縮尺1/25,000の地形分類図を作成した。
2) 地質概査及び精査
主に表層地質、地質構造及び断層変位地形を中心に現地踏査を行った。特に断層を横断する両側約500mの範囲は、断層露頭や鍵層等の重要露頭について精査し、スケッチを行った。年代測定試料については、試料の採取に努めた。
成果は、地質図(概査結果:縮尺:1/25,000、精査結果:縮尺:1/10,000)及び地質断面図(縮尺はそれぞれの地質図に同じ)、重要露頭のスケッチ等である。
3) 航測図化
人工改変等で、旧地形が不明瞭な箇所について、断層変位地形の把握のために航測図化を実施した。作業方法は米軍写真を用いて地形図の作成を行い、現在の地形図と比較しながら断層変位の箇所の抽出を行なった。実施個所は上記のとおりである。等高線は1m間隔であり、縮尺は1/2,500である。
4) 地形測量
断層変位量、変位速度を評価するため、地形面の変位量調査を地形測量において実施した。基本的には10〜20mピッチ(実際は地形の状況にあわせて不規則に選定)に距離500m程度をレベル測量する方法である。