1−3−4 ボーリング調査結果

ボーリング調査は、地下から得られた堆積物の観察・記載と各孔ごとの地質の対比を行い、地層の同一の基準面を特定し、その鉛直平均変位量を求めることを目的に実施した。また、極浅層反射法探査結果の解釈に活用することやトレンチ地点での事前の地質状況を把握するためにも実施した(ボーリング調査結果から得られた各地点での地質断面図はU章参照)。

各地点での調査結果のまとめは、次のとおりである。

(1) 青川上地点

この調査地点においては、断層崖を挟んで5孔のボーリング調査を実施した。各孔とも、下位より黄褐色の礫混じりシルト〜シルト質細砂が分布し、その上位に砂礫層が分布する。地表踏査の結果を合わせて検討すると、各地層は、下位の地層が東海層群米野累層に対比され、その上位層は中位面の段丘を構成する堆積物である。各孔の段丘堆積物中には粘土層が挟在しており、その分布が崖の両側に認められることから段丘堆積物は崖を挟んで一連の堆積物であることが推定された。

各孔の段丘堆積物の基底面には、崖部を挟んで分布高度の違いが見られ、その変位量は約6mであった。

(2) 青川中地点及び青川中’地点

これらの調査地点においては、断層崖を挟んで各2孔の計4孔のボーリング調査を実施した。

青川中地点での地質は、調査孔周辺の露頭*1による層相の比較等から、この調査地点での最も下位に分布する砂礫層は東海層群米野累層、また青川中’地点では東海層群大泉累層に対比される。これらの東海層群を覆って両地点に分布する堆積層は、各孔の層相の対比によって調査地点の位置する低位面を構成する砂礫層と、その地層と東海層群に挟まれた中位段丘堆積物相当層である。

青川中地点および青川中’地点ともボーリング調査結果から得られた段丘堆積物の基底面には、それぞれの地点で崖をはさんで分布高度に違いが見られた。青川中地点では中位段丘堆積物相当層の基底面を変位の同一基準面とみると、鉛直方向(西側隆起)に約9m変位している可能性がある。また、青川中’地点では、同じように中位段丘堆積物相当層の基底面を変位の同一基準面とすると東側隆起で約11m変位している。

(3) 宇賀川地点

この調査地点においては、断層崖を挟んで4孔と崖下で1孔の合計5孔のボーリング調査を実施した。

崖下以外の4孔のボーリング地点では、掘削された最も下位の地層は低崖地形を挟んで西側と東側で異なり、西側の2孔が東海層群多志田川累層、東側の2孔が東海層群米野累層に対比される。

段丘堆積物は、これらの地層を被覆し、中位面を構成する砂礫層である。堆積物は層厚の変化が少なく層相の特徴が類似していることから、堆積時期がほぼ同じ一連の堆積物である。

崖下の1孔は沖積面に位置しており、その地点の地質は資料の層相等から、下位より東海層群多志田川累層に対比される地層、完新世の氾濫原堆積物、耕作土が分布する。氾濫原堆積物は大きく3層準に区分される。

各孔の中位段丘堆積物の基底面には、低崖地形を挟んで分布高度に違いが認められ、この基底面を同一基準面とした場合、鉛直で約10〜13mの変位量が推定される。

(4) 田光地点

この調査地点においては、断層崖を挟んで4孔のボーリング調査を実施した。

本地点で掘削された地層は、調査地点周辺の露頭等の比較から、低崖地形を挟んで西側では下位より東海層群大泉累層、東側では大泉累層とその上位に東海層群米野累層が分布し、それらを覆うように低位段丘堆積物が分布する。段丘堆積物は、花崗岩礫を多く含む砂礫層で全体にシルト分は少ない。段丘堆積物は層厚の変化が少なく層相の特徴が類似していることから、堆積時期がほぼ同じ一連の堆積物である。

この段丘堆積物の基底面を基準とした場合、想定される断層の間で分布高度に違いが見られ、その鉛直変位量は約5mと推定される。