@ 分布
太田・寒川(1984)は、鈴鹿東縁断層帯を、鈴鹿山脈と山麓の段丘*1群との境界部をほぼ南北方向に走る境界断層系と、それより約1.5km〜3km東の段丘内をほぼ南北方向に連続する前縁断層系とに大きく区分した。前縁断層系と境界断層系の分布は必ずしも同一ではなく、前縁断層系の分布は境界断層系の活動性と関連がある。また、第四紀後期に活動がみられる境界断層系の前面では、前縁断層系の分布は認められないとしている。
A 活動履歴
鈴鹿東縁断層帯のうち特に前縁断層系では、時代を異にする段丘面の変位の比較から、変位の累積性が知られている。太田・寒川(1984)は、境界断層系と前縁断層系との活動が相互補完的であることを明らかにした。すなわち、境界断層の活動が第四紀後期に活発でないところでは前縁断層系の活動が顕著であり、一方境界断層系で第四紀後期の変位が活発なところでは前縁断層系は存在しないとしている。
B 断層の構造
太田・寒川(1984)によれば、ほぼ南北方向に走る断層帯はすべて西上がりの逆断層*2であり、横ずれ変位は認められない。境界断層系では高角逆断層、前縁断層系では低角逆断層を形成している。また、前縁断層系の存在する一部の箇所には副次的な東上がりの逆断層も存在するとしている。
(2) 現時点において鈴鹿東縁断層帯での不明確な事項
@ 分布
境界断層系と前縁断層系の分布については、太田・寒川(1984)によりほぼ解明されているが、境界断層系の活動が活発な地域では前縁断層系の分布がみられない等、断層の活動性と分布に関連性がみられる理由については明確にされていない。
A 活動履歴
活断層の変位量*3や変位速度*4については、太田・寒川(1984)が算出し、活動度をB級としている。変位の累積性は明らかであるが、個々の段丘面の活動時期、最終活動時期の資料はなく、断層の活動間隔は不明である。
B 断層の構造
断層面の傾斜が不明である。1回の断層活動による単位変位量が把握されていない。
(3) 調査方法及び調査のポイント
本調査は、鈴鹿東縁断層帯について、@断層の位置の特定、A断層の活動履歴等の把握を行うために、既存資料調査、地形・地質調査、物理探査、ボーリング調査及びトレンチ調査を実施した。
鈴鹿東縁断層帯は、大きく境界断層系と前縁断層系に区分でき、調査はそれぞれの断層系に対して効果的と思われる調査方法を選定した。
地形・地質調査は、既存文献等の調査、空中写真判読等の結果を利用し、広域的な地質構造や断層帯の連続性を把握するための地質踏査(概査)と、重点的な範囲で詳細な断層の分布把握のための地質踏査(精査)を行った。
物理探査は、トレンチ位置の地下地質情報を事前に把握するために極浅層反射法探査*1を行うとともに、大深度の地下地質情報及び地下深部における境界断層系と前縁断層系の関連性を把握するために大深度反射法探査を実施した。
ボーリング調査は、トレンチ位置の地下地質情報を得ることや断層崖*2を挟んだ同一層準*3の変位量の把握を行うために実施した。
トレンチ調査は、以上の調査結果を総合的に活用し、掘削地点の選定を行った。
(4) 調査項目及び数量
調査地点別の調査内容を表1−2−3−1、調査項目別の調査内容を表1−2−3−2、ボーリングの調査数量を表1−2−3−3に示す。また、調査地点の調査位置図を図1−2−3−1及び図1−2−3−2に示した。