トレンチ掘削用地は,雨竜地区は林地(地権者:長谷川直己氏),浦臼地区は水田(地権者:氏原志呂夫氏)である.用地の確定後,三等三角点・四等三角点を基準として用地周辺の測量を行なった.トレンチ掘削後にも,トレンチ位置と法面について測量を実施した.結果は図6−1に示した.
トレンチ掘削・法面観察・スケッチ
トレンチの掘削は,0.7m3級のバックホーと法切りバケットによって行った.まず表土層あるいは耕作土を薄く剥ぎ取り,下位の土層・地層と混じり合わないように,別にビニールシートを掛けて保管した.深度2.8m程度まではバックホーで掘削し,その後法切りバケットにて法面仕上げと所定の深度までの掘削を行った.法面の最終的な整形作業は手作業で行なった.
その後,足場用パイプとビニールシートを組み合わせて移動式の法面保護工を施し,またトレンチ内の排水のためポンプを設置した.グリッドの設置は,地表に水平の基準線を設け,これに平行および直交する1m間隔の水糸を張って行なった.その後,トレンチ法面の写真撮影を行い,さらに法面の観察・スケッチ,および試料採取を行なった.
スケッチは,原則として縮尺1/20で行い,単層毎に地層を区分した.そして,単層毎の層相,堆積構造,地層境界の形状,変形構造,層序関係,断層,亀裂,および動植物遺体などについて詳細に観察・記載した.また,観察によって明らかになった単層間の不整合,単層と断層の切った・覆ったの関係,層準による変形の違いなどをもとに,断層活動の痕跡およびその層準(イベント層準)の認定に努めた.なお,法面の名称については,南側法面またはS面,北側法面またはN面などの表現を用いた.法面のスケッチ位置は,壁面の名称・起点からの水平距離,標高を用い,例えば北側法面で,起点(西端)からの水平距離20.5m,標高67.5mの場合は[N20.5,67.5m]と表現した.区間については,法面の名称と起点からの距離区間を組み合わせ,例えば[N20−21]と表現した.
試料採取および分析
堆積物の年代と古環境を明らかにする目的で,両地区のトレンチ法面と近傍の露頭において試料採取を行い,放射性炭素年代測定および花粉分析を実施した.前者の試料については木片・腐植質シルトおよびシルトを,後者の試料についてはシルト・砂質シルトの細粒部を,異物などが混入しないよう採取した.なお,各トレンチ法面の堆積物中にテフラの分布を確認することはできなかった.
試料採取位置は図5−1(雨竜地区露頭),図6−3(雨竜トレンチ),および図6−6(浦臼トレンチ)に,採取試料の一覧は表6−1と表6−3に示す.
上記の試料のうち,放射性炭素年代は雨竜地区で2個,浦臼地区で4個の合計6個の測定を株式会社地球科学研究所に依頼した.測定方法は,4個をAMS(加速器質量分析器)法,2個をβ線シンチレーションカウンタ法で行い,14C年代,炭素安定同位体比による補正14C年代,暦年代をそれぞれ算出した.花粉試料については,雨竜地区で12個,浦臼地区で20個,および周辺地域の8個の合計40個をアース・サイエンス株式会社に分析依頼した.分析にあたり,採取地点は全て貧化石層と見られたので,1試料あたり300gを分析処理した.