5 トレンチ調査地点近傍の地形と地質

これまで実施してきた調査結果から,増毛山地東縁断層帯におけるトレンチ調査の候補地として,雨竜地区と浦臼地区の2地区に絞った.まず,これまでの調査結果に基づき,これら2各地区の特徴をまとめて述べる.次に,トレンチ掘削位置を確定するために,各地区の詳細な地形・地質調査を行なって地質図(図5−1図5−3)を作成し,トレンチ候補地としての地質構造上の意義を明確にする.

雨竜地区[浅層反射法の測点250〜350m付近]

・空中写真判読および地形調査によれば,幅200m程度にわたり明瞭な撓曲崖が見られる

・この撓曲崖では,5万年前に形成されたと推定される段丘面が東へ撓み下がっている.

・地質調査によれば,西側の山地には急傾斜ないし逆転した新第三紀鮮新世の地層が見られ,鮮新世以降に構造運動あったことを示唆する(藤井・曽我部,1978).

・重力プロファイル調査で,測点350mの直ぐ東側でやや大きな低異常が見られた.

・IP比抵抗映像法では,撓曲帯の東側にあたる測線340〜390mに,ブロック状の高比抵抗異常帯が見られる.

・反射法地震探査によれば,測線250m付近から西側では反射面の乱れが激しく,また西傾斜の断層面の延長は測点300m付近で地表と交わるようにみえる.

浦臼地区[浅層反射法の測点500〜550m付近]

・空中写真判読および地形調査によれば,完新世面(T6面)に南東へ撓み下がる幅約150m,垂直変位量約1mの撓曲崖が見られる.

・地質調査によれば,西側の山地には急傾斜した鮮新世〜前期更新世の地層が見られ,鮮新世以降に断層運動があったことを示唆する.

・重力プロファイル調査で,測点500mの北西側で僅かな低異常が見られた.

・浅層反射法から推定される断層の延長が,測線500m付近の地表近くまで伸び,また浅部反射面の凹部が測線500m付近を中心にみられる.

・極浅層反射法で,反射面の切れ目を結ぶ不連続線は西傾斜の断層状の構造を呈し,その上部への延長は測線520m付近で地表と交わる.

・IP比抵抗映像法によれば,比抵抗値・充電率の両者が変化する境界が測線530m付近にある.