和断層
沖積低地面上に位置する北竜町和市街の西方には，低断層崖が報告されている（活断層研究会，１９９１）が，これは北西から流れてくる小豆川の旧河道がつくった崖であると判断した．これより北方の撓曲帯は，やや不明瞭ながら延長２．５ｋｍ程度追跡できる．しかし，それよりさらに北では，大きく人工改変されて不明瞭となっている．
和市街の南方にあたる恵岱別川と雨竜川の合流点付近の雨竜町牧岡では，Ｔ３面が撓曲変形している．延長１．５ｋｍの撓曲帯は北−南走向，幅１００〜２５０ｍで，東へ向かって撓み下がっている．垂直変位量は１０〜２５ｍ程度であり，Ｔ３の離水年代を５万年前とすると変位速度は０．２〜０．５ ｍ／ｋｙｒ程度である．この撓曲帯付近の露頭では，鮮新世の美葉牛層が南北の走向で１８〜２３゜東に傾き，段丘堆積物も１０゜程度東に傾く．この撓曲帯の西方２５０ｍには，西落ちの逆向き低断層崖が並走している．
上述したように，北竜町和市街の北方の撓曲崖（確実度U），および南方の段丘面の撓曲崖（確実度T）が確認されたが，その間の沖積低地面は変形していない．断層が沖積低地面下にも伏在すると仮定すると，延長は６．５〜１０ｋｍ程度となる．
樺戸断層群セグメントａ
雨竜町洲本北方から豊里にかけての山麓に沿って，幅５０〜２００ｍ，延長４ｋｍの撓曲帯がある．この撓曲帯では，Ｔ３面とＴ５面が東へ撓み下がっている．
雨竜町豊里から新生にかけて分布するＴ５面には，ほぼ南北走向の３本の撓曲崖が認められるが，それらはいずれも人工改変を受けている．西側の撓曲崖と中央の撓曲崖の間には，南北走向の地形的な活背斜軸が存在する．この活背斜軸の西側では，Ｔ５面の勾配が緩くなっている．中央の撓曲崖を横断する簡易水準測量の結果（図３−１）によれば，撓曲崖の幅は２００ｍで，東側に５ｍ撓み下がる．第５章で述べるように，幌加尾白利加川河床露頭では深川層群が急立・逆転しており，数カ所で断層の存在が認められるが，これらの断層が段丘堆積物を切っている証拠は見出せなかった．
雨竜町新生から新十津川町大和にかけては，急立した美葉牛層（特に火砕岩層）を切る三角末端面が延長４ｋｍにわたって連続する．しかし，Ｔ６面や低地面には明瞭な断層変位地形は見あたらない．新十津川町大和南部には，北北東−南南西の走向をもつ２本の撓曲帯が存在し，それらの間に同じ走向の地形的な活背斜軸が存在している．東側の撓曲崖は幅２００ｍ，延長２．５ｋｍで，ここではＴ５面・Ｔ３面が東へ撓み下がっている．西側の撓曲帯は幅１００ｍで，ここではＴ５面が西側へ撓んだ結果，緩勾配になっている．このリニアメントに沿った部分には地質的な撓曲構造は認められず，徳富川沿いで観察すると，地形的な活背斜軸に対応するように美葉牛層は緩やかな背斜構造を示す．
新十津川町の総富地川下流の両岸には，北北東−南南西走向のやや不明瞭な撓曲帯が存在し，ここでＴ５面・Ｔ３面が東へ撓み下がっている．沖積低地面を挟んで延長は３ｋｍである．
以上に述べたようにセグメントａでは，雨竜町洲本〜豊里〜新生，および新十津川町大和から総富地川下流の段丘面までの間に，確実度T〜Uの撓曲崖が確認された．これらがすべて連続すれば，総延長は１９．５ｋｍである．
樺戸断層群セグメントｂ
新十津川町花月北方から浦臼町於札内にかけては，明瞭な断層変位地形は見当たらない．活断層研究会（１９９１）で確実度T・活動度Ｂと表現されている撓曲崖は，Ｔ２面とＴ５面の段丘崖と推定される．南１０号線道路の北側には，この崖を横切る大きな砂利採取場があり，そこではほぼ水平な河川成砂礫層（美葉牛層）が分布するのが確認された．このセグメントが活断層である可能性は小さい．
樺戸断層群セグメントｃ
浦臼町於札内から浦臼沢にかけて北東−南西走向の撓曲帯が存在し，ここでＴ３面・Ｔ２面・Ｔ１面が南東へ撓み下がっている．この撓曲帯の中央部分は，同一時代に形成された面の変位ではないため，確実度は高くない．簡易水準測量の結果（図３−１）によると，浦臼沢左岸のＴ２面では，撓曲帯は幅２００ｍで，東に１３ｍ撓み下がっている．
浦臼町浦臼沢から月形町札比内にかけては，北東−南西走向・幅１００〜３００ｍ・延長１２ｋｍの撓曲帯がみられる．確実度はかなり小さいが，これに並走して１〜３本の撓曲帯もみられる．これらの撓曲帯では，Ｔ６面，Ｔ４面，Ｔ３面，Ｔ２面が南東へ撓み下がっている．簡易水準測量の結果（図３−１）によると，札的内川下流左岸のＴ６面では，撓曲帯は幅１５０ｍで，東側に１ｍ撓み下がっている．また，札的内川下流右岸のＴ３面では，撓曲帯は幅１５０ｍで，東に４．５ｍ撓み下がっている．この撓曲帯に沿って，浦臼射撃場・札的内沢左岸・共有地の沢・晩生内川左岸・札比内川左岸などの各地点で，厚軽臼内層上部層の礫岩層が撓曲構造を示していることを確認した．
以上のように，本セグメントでは，浦臼町於札内より月形町札比内にかけて，段丘面に確実度T〜Uの撓曲崖が延長１２ｋｍにわたって分布し，低地面を除く各河成段丘面が変位している．
樺戸断層群セグメントｄ
月形町北農場から知来乙にかけての山麓線付近には，撓曲帯が存在するようであるが，一続きの段丘面の変形ではないので確実ではない．月形町知来乙から五耕地山にかけては，東北東−西南西走向で幅４００ｍの撓曲帯が存在している．ここでは，Ｔ４面（Ｔ３面の可能性もある）が南南東へ撓み下がっている．即ち，全体的には確実度U〜Tの撓曲帯が延長５ｋｍにわたって存在する．なお，この撓曲帯はセグメントｃの東側にある確実度の小さな撓曲帯延長部へ連続するようにもみえる．従って，ｃとｄは同時に活動している可能性がある．
浦臼断層その他
この地域の山地側には，従来，セグメントａ南端部に並走する「自衛隊射撃場南西」（確実度V：延長２．５ｋｍ），およびセグメントｃの北部に並走する「浦臼断層」（確実度U：延長７ｋｍ）の２つのリニアメントの存在が指摘されている．これらについては，段丘面の変位を確認できなかった．なお，浦臼断層付近では厚軽臼内層下部層がほぼ垂直に変位している．また，厚軽臼内層上部層は１０〜２０°の傾斜を示すことから，前期更新世以降にも変位している可能性は大きいが，最近の活動については不明である．