(1)試料採取
試料採取は,地層の地質観察・スケッチ・記載・写真撮影後,担当員の指示により実施した.放射性炭素年代測定試料については,木片,腐植質シルトおよびシルトを,花粉分析試料については,シルト,砂質シルトの細粒部を,塵等が混入しないよう採取した.
採取試料は,トレンチ名,採取位置,試料番号を記したビニール袋に収納した.なお,放射性炭素年代測定に供する試料については,あらかじめアルミ箔に包んだ後,ビニール袋に収納した.
採取試料数は以下の通りである.
・放射性炭素年代測定試料 雨竜地区 3試料
浦臼地区 15試料 計 18試料
・花粉試料 雨竜地区 12試料
浦臼地区 19試料 計 31試料
分析は上記の試料のなかから,放射性炭素年代測定 4試料,花粉分析 31試料について実施した.測定分析は,放射性炭素年代測定は,株式会社 地球科学研究所,花粉分析は,アース・サイエンス株式会社に依頼した.なお,一部の試料の分析については,北海道立地下資源調査所が別途依頼し実施した.
(2)放射性炭素年代測定
表2−0−2に測定方法などに関する条件を,図2−0−8に解析方法の概要を示す.
放射性炭素年代測定は,3試料をAMS(加速器質量分析器)法,1試料をβ線シンチレーションカウンタ法で行い,14C年代,炭素安定同位体比による補正14C年代,暦年代をそれぞれ算出した.
(3)花粉分析
花粉分析試料は,全試料採取地点とも貧化石層と見られたので,1試料について300gを分析処理した.
各試料は次の方法によって処理分析し,化石花粉を抽出した.
@ 試料を手で揉みほぐし,倍量の45%フッ化水素を加えよく攪拌した後,1昼夜ドラフト中におく.
A 遠心分離器によりフッ化水素を除去し,蒸留水で3回水洗いを行う.
B 試料に倍量の塩化亜鉛の飽和溶液(比重2)を加え,よく拡散したものを2000回転/分で1時間遠心分離する.
C 上澄み液を採取して3回水洗いを行う.
D 試料に酢酸を加え,10分間湯煎(80゚C)で加熱した後酢酸を除き,無水酢酸:硫酸の9 :1液を加えて反応させる(アセトリシス処理).
E 水洗いを3度行う.
F 上記の処理を行った後もガラス質の残差を含むため,フッ化水素処理を再度行う.
G 試料を蒸発皿にあけ,蒸留水を加え攪拌して10分おいた後,上澄み液を除去する操作を数回繰り返す.
試料中の水分を除いた後,グリセリンゼリーで封入し,プレパラートを作成した.検鏡は400倍と1000倍の光学顕微鏡で行い,木本花粉の総数が200個に達するまで同定し,その間に視野に現れるすべての草本花粉,シダ,コケの胞子を同定することを目的にした.産出率(%)は木本花粉については,木本花粉の総数を基数とし,草本花粉および胞子は花粉胞子の総数を基数として算定した.