(3)地形面の変位および撓曲について

尾白利加川に沿っては,現河川氾濫原面を含めて5つの地形面が観察でき,これらはいずれも河川成の礫層をともなって撓曲し,深川層群の背斜軸部に向って急激に上昇するように見える.この観点から,5,000分の1地形図を用いて地形面の変位を解析し,その結果を図1−1−5に示した.この際,有力なリニアメントとして識別できる地形変換の基準線に尾白利加川の谷方向を考慮に入れ,ある角度をもってほぼ平行に第1,第3,第4段丘面,および現河川氾濫原面の断面線を引いて断面を作成した.

第1段丘面の撓曲部は幅が約1.3kmとみなされ,その間の変位した面の高度差は68mとなる.河川勾配が現在と同様であったと仮定して,この撓曲部に対応する現河川の氾濫原面の高度差10mを68mから差し引くと,58mが実際の変位量となる.ただし,第1段丘堆積物が第4段丘面下に埋没することを考慮すると,実際の変位量はこれよりやや大きくなる可能性がある.

第2段丘面の撓曲部は幅が約0.5kmとみなされ,その間の変位した面の高度差は21mである.同様に,この撓曲部に対応する現河川氾濫原面の高度差3mを差し引くと,実際の変位量は18mとなる.

第4段丘面については,地形変換の基準線付近でわずかに変位しているように見えるが,詳細は確認できない.全体としては,その断面は現河川氾濫原面および現河床のそれらにほぼ平行しており,ほとんど変位は認められない.

現河川氾濫原面については,変位は全く認められない.

第1段丘面と第3段丘面の変位量を比較すると,より古い段丘面ほど変位が大きくなり,変位の累積性が認められる.ただし,第四紀前半の堆積物は本地区付近には存在しないようなので,第4紀を通した変位の進行状況は不明である.なお,第1段丘面が5万年前(?)の離水時から変位を開始したとすると,1.16m/1000年の垂直変位速度となる.

尾白利加川河床で確認できた断層に対応して,地形面が変位しているという証拠は見いだすことはできなかった.