上記の高度差から1回当たりの鉛直変位量は2m弱で,水平変位量は不明である.
(b)鉛直平均変位速度と活動間隔および活動度
25~28kaの姶良丹沢火山灰層準は4m変位し,2回の変位(地震活動)を受けていると解釈される.1回前の活動時期の特定ができないので,活動間隔は決まらない.仮に姶良丹沢火山灰(25−28ka)以降で最新活動時期(1−3ka)までの中間時を活動間隔とすると,1万2.5千年程度が試算される.この値で,鉛直平均変位速度を求めると,0.16m/千年程度で,活動度B級下位と推定される.
これは最近の姶良丹沢火山灰以降の活動から推定されたものであるが,本調査で,少なくとも520ka(サクラ火山灰)以降の断層の活動履歴が解明されている.表4−2中の姶良丹沢,BT74,サクラ火山灰の年代値は他のものより,信頼できるので,それを基準に平均変位速度を求め,図1−23に示した.姶良丹沢火山灰以前からBT74火山灰以降までの約333ka間の断層の平均変位速度は0.09m/千年である.姶良丹沢火山灰以前からサクラ火山灰以降までの493ka間では0.12m/千年となる.二つの数字は近似し,信頼できると思われる.前述の姶良丹沢火山灰以降の平均変位速度を考慮すると,宇治川断層の平均鉛直変位速度*は0.09?0.16m/千年となるが,長期間のデータから推定した0.09~0.12m/千年の値が信頼出来る.この値と単位変位量から平均活動間隔を求めると,1万7千~2万2千年となる.
これら検討から,宇治川断層は少なくと,52万年前以降の活動度はB級最下位〜C級最上位程度で,ほぼ一定の鉛直平均変位速度(0.09~0.12m/千年)で活動していたと推定される.平均活動間隔は1万数千年〜2万数千年で,52万年前以降の累積変位量を45~60mと見積もることができる.
[注 変位速度や堆積速度の推定で,シルトの圧密効果を考慮していないが,サクラ火山灰層準以浅は圧密を受けにくい礫や砂が卓越する.ここでの平均堆積速度は堆積と浸食の総和を示す.]