(1)概要

A.原理

火山噴火で放出された軽石,火山灰,火砕流の内,大規模に噴出した火山灰は広範囲に分布し,追跡も可能である(火山噴出物をテフラと総称する).地質学的には噴出の期間は短いことから同時間面を追跡できる有効な鍵層となる.個々の火山灰には岩石学的な特徴がある.国内で広範囲に分布する火山灰は,その特徴の識別から,噴出源の火山,火山灰分布範囲,年代などの研究が進み,広域指標テフラとして,カタログ化(1,2,3)が進んでいる.

本調査においては,変位の基準となる地層層準を決定する目的で,火山灰の降灰層準を特定するために,ボ?リングコアを用いて火山灰分析を行った.

文献

(1)町田 洋・新井房夫(992):火山灰アトラスー日本列島とその周辺?.東京大学出版会,276.

(2)第四紀学会編(1993):第四紀試料分析法.東京大学出版会,556.

(3)小池一之・町田 洋(2001):日本の海成段丘アトラス.東京大学出版会,105.

本文では最新情報(3)を参考としている.

B.分析実施機関

試料採取と分析を有限会社古澤地質調査事務所に委託した.

C.試料採取

掘削現場で開催した第2回ワーキング委員会で,火山灰の肉眼検討,試料採取位置の決定,試料採取,第3〜4回以降のワーキングでは,分析結果の報告・議論・検討および追加試料の採取の手順で,効率的な試料採取をおこなった.

最初の試料採取は,肉眼観察から検出した火山灰の組成とそれに対比される部分および文献から想定される広域火山灰の検出を目的に上部の淡水成シルト(T層)から試料を採取し,分析した.その後のワーキングでは,その概要を報告すると共に,その下位の試料を採取して,分析を始めた.さらに,U・V層を中心に追加試料を採取して分析した.

採取分析数は885試料について,火山ガラスの有無について分析した.さらに広域火山灰認定のため,119試料で含有鉱物組成比率測定や屈折率測定をおこなった.詳細な採取位置での産状,屈折率データ,鉱物写真は巻末に添付している.

議論を明解にするために,ここでは標高−10m以浅の浅層とそれより深い部分に2分して説明する.