3−4−1 分析方針と種別

A.分析方針

過去のほぼ水平と仮定できる一続きの堆積面・浸食面(=同時間面)が断層で変位を受けると,面を基準に上盤と下盤の落差(鉛直変位)の測定が可能となる.次に,変位量と堆積面形成年代との関係から断層の活動度等の推定が,可能となる.

B.分析種別

コア試料を用い,炭素年代測定,花粉分析,珪藻分析および火山灰分析により,宇治川断層の活動度を検討した.

C.分析資料採取位置の決定

既に京都盆地南部の地下地質区分(層序)の概要は,南区鉾立公園のKD−1ボーリングで,把握さている.その結果や文献を考慮し,深度10m以浅では,ほぼ均等間隔の@炭素年代測定と鬼界アカホヤ火山灰(K−Ah)等の広域火山灰を対象とするA火山灰分析を計画実施した.なお,深度10m以深の試料は,炭素年代測定限界5万年前を越えると思われるが,それを確認するため少量の炭素年代測定を実施した.

深度10m以深では,温暖な気候下で堆積したMa9と呼ばれる既知の大阪層群粘土層を鍵層(関西地盤情報活用協議会,1998)と用いるために,No.3の上部の推定Ma9を中心にB花粉分析を計画実施した.さらに,コアの肉眼観察から対比したNo.1,No.2での同層準も,対比の信頼性を確認するため,花粉分析を行った.

KD−1では,上位からMa9,Ma6,Ma5,Ma4,Ma3の海成粘土と栂(トガ)火山灰,八丁池火山灰,アズキ火山灰の広域火山灰(テフラ)が識別されている.そこで,海成層識別のため,C珪藻分析を主としてNo.3ボーリングシルト層で計画実施した.

No.1,No.3で八丁池火山灰や佐川火山灰を肉眼で検出している.この火山灰を用いた対比や時間面設定のため,各ボーリングの想定産出位置付近を10cm間隔で試料を採取し,D火山灰分析をおこなった.

D.分析数量

上記分析方針や試料採取位置および数量は,第2~4回のワーキング委員会で決定し,順次分析を依頼した.委員会で,広域火山灰の有効性が議論,確認され,分析数量を当初案から大幅に増加した.そのため,他の分析数量を削減した.この分析計画は第3回委員会で,追認された.

採取分析数量は以下のとおりである.

1.炭素年代測定       23試料

2.花粉分析         25試料

3.珪藻分析         9試料

4.火山灰分析A(詳細分析)  119試料

5.火山灰分析B(概査分析)  885試料