S波反射法探査測線上に掘削されたボーリングNo.3孔を利用して,深度とS波走時の関係及びS波速度の深度方向の分布を把握し,S波反射法探査の解析及び解析結果の解釈に資することを目的として実施した.
B.測定方法
測定間隔は2mとし,受振器は孔中固定式受振器を用いた.孔中受振器は水平直交2成分及び鉛直成分1成分からなり,エアパッカーを用いて孔壁に圧着固定した.
震源は電動板たたき式震源を用いた.調査孔近傍の地面を水平に整形し,震源用しての木板(200cm×40cm×10cm)を敷き,その上に電動式小型杭打ち機を利用したハンマー装置を設置した.板にはスパイクを打設し,地面との密着度を高めた.発震は,いわゆる”右たたき”と”左たたき”を交互に行う方法とし,ハンマーで板の一方の端を打撃する測定が終了したならば,他方の端を今とは逆方向に打撃する手順で測定を行った.これにより板の底面と地面の間にせん断力が働き,比較的単純なS波(SH波)を発生させることができる.
ボーリング孔に沿って深部に伝播していったS波は孔中受振器で感知される.S波の振動をそこで電圧変換して地上のデータ収録装置に送り,フィルタリング,振幅調整,AD変換などの処理を行った後,内蔵のハードディスクに保存した.CRTディスプレイ上で右たたきと左たたきの記録波形の位相が反転することをもって,S波の確認を行った.
このような測定を深度2m間隔に行った.S波のエネルギーはあまり大きくはないので,同一測定深度において複数回の発震を行い,その都度データを加算してS/N比を向上させるスタッキング処理を行った.スタッキング回数は孔深部で10回程度であった.なお,深度144mの測定中に発生した孔壁崩壊により深度122m以深が埋まり,深度122〜144mが測定できなかった.
図3−2−3−1に測定概要図を,表3−2−3−1に使用測定機器を示す.
C.解析方法
現場測定で得られた記録波形から,S波が各受振点まで到達するのに要した時間を読み取った.読み取りに際しては,右たたきと左たたきの波形記録の位相が反転する位置を目安にした.読み取り値に震源位置補正を行い,縦軸に深度,横軸に時間をとったグラフにプロットし,走時曲線を作成した.図3−2−3−2のようにプロットしたデータ群に,ボーリング柱状図を参照しながら,その傾きに応じた直線を最小二乗法で当てはめていき,その直線の傾き(図中のtanθ)からS波速度を,走時曲線の折れ曲がり点から速度層境界を求めた.