A.標高−10m以浅の火山灰
標高−10m以浅の地層中から,3.1ka(ka=千年前)の伊豆半島起源のカワゴ平火山灰(Kg),中国山地三瓶山起源と思われる角閃石を特徴とする火山灰(Ho),南九州から飛来した7.3kaの鬼界アカホヤ火山灰(K−Ah)や25~28kaの姶良?丹沢火山灰(AT)の降灰層準を試料の検鏡で,決定した.さらに,No.3では89kaの阿蘇−4(Aso−4),95kaの鬼界葛原(K−Tz)を検出し,同定した.しかし,No.1,2の同層準と思われる部分からそれら火山灰は,検出できなかった(図1−15).火山灰の年代値はMachida,1999)(18)を参考した.
B.標高−10m以深の火山灰
標高−10m以深の地層の肉眼観察で,発見された火山灰を組成や鉱物の屈折率から以下の通り,既知火山と対比・同定した.
八丁池T火山灰(No.1標高−139.8m),BT74火山灰(No.3標高−42.6m),サクラ火山灰(No.3標高−143.4m),佐川U火山灰(No.3標高−165.9~−167.3m)である.ボーリング間に共通する火山灰は検出できなかった.連続試料分析で,以下の火山灰を検出し,対比の資料とした(図1−16).
@ No.1標高−10m付近とNo.2標高−28.1m付近にBT74火山灰を検出した.その年代は360kaとされてる(吉川・井内,1991)(19).
ANo.1標高−70.3mにカスリ火山灰(町田・新井,1992;Yoshikawa,1984)(20,2を検出した.その年代を,西村・笹島(1970)は380±30ka,370±40ka,鈴木(1988)は420±80kaと報告している(22).
ここでは花粉分析から明らかにされた大阪層群海成粘土Ma9の下位にカスリ火山灰が産出する.Ma9の基底を京都市(2000)(14)は400ka,須貝他(1999)(23)は420ka程度としている.また,カスリ火山灰の下位に約520kaサクラ火山灰(小森笠森11)(Machida, 1999)(18)があることから,カスリ火山灰を470kaと推定した.
BNo.1標高−100mに多量の普通角閃石火山灰を検出したが,既知火山灰と対比でき るものではなかった.
CNo.1標高−102.2mに緑色普通角閃石,少量の斜方輝石,高温型石英が多く含まれる火山灰を検出した.鉱物の屈折率から下門(シモカド)火砕流に対比した.Machida(1999)(18)は下門火砕流を樋脇火砕流(570−580ka)と呼び,Ma6層準直上としている.佐川Uもほぼ同層準とされていることから,両者は近い層準と見なすことができる.ただ,Ma6堆積期間は数万年間で,細かいに対比基準とはならない.京都市(2001)(14)はMa6を600kaとしており,佐川Uを560ka,下門火砕流 を580kaとした.
DNo.1の標高−78.7m付近で,サクラ火山灰を検出した.サクラ火山灰はMachida(1999)(18)で520kaとされている.
なお,八丁池T火山灰は京都市(2001)(14)を参考に,700kaとした.
文献
(18)Machida,H.,(1999):Quaternary Widespread Tephra Catalog in and around
Japan:Recent Progress.第四紀研究,38,194−201.
(19)吉川周作・井内美郎(1991):琵琶湖高島沖ボーリングコアの火山灰層序.地球学,45,81−100.
(20)町田洋・新井房夫(1992):「火山灰アトラス」東京大学出版会,276.
(21)Yoshikawa,S.,(1984):Volcanic ash layers in the Osaka and Kobiwako Group, Kinki
District, Japan.J.Geosci.Osaka City Univ.,27,1−40.
(22)市原 実編(1993):大阪層群.創元社,340.
(23)須貝俊彦・杉山雄一・水野清秀(1999):深度600mボーリング(GS−NB−1)の分析に基づく過去90万年間の濃尾平野の地下層序.地質調査所速報,no.EQ/99/3(平成10年度活断層・古地震研究調査概要報告書),69−76.