清水神社以南,泉涌寺までは踏査範囲が前縁に移り町中になり,地質露頭は見られない。リニアメント上に,傾斜変換点が連続して観察された。
東福寺から深草にかけて,基盤の丹波帯中・古生層と大阪層群の境界に見られるリニアメント東側では,尾根部で大阪層群の露頭が観察される。しかし,谷部では宅地開発が進み,露頭は少ない。
大阪層群と思われる露頭は,主に粘土,シルト層が主体であり,粗砂層を挟み,一部に中礫を含む。尾根の頂部には中礫主体の段丘堆積物が見られる。
扇状地および低位段丘堆積物が見られる地域では,地形の傾斜も東側に比べ緩く,露頭はほとんど観察されない。既存ボーリングなどから,扇状地面及び低位段丘面の下には,比較的締まった砂層や,シルト層,砂礫層が分布しており,段丘堆積物が埋没していると考えられる。
深草地域は比較的露頭条件が良く,全体的に大阪層群が観察される。深草団体研究会(1962)はこの地域の詳細な地質調査を行っており,東側に大阪層群下部,西側に大阪層群上部が分布することを報告している。一般に大阪層群下部は砂,砂礫主体であり,大阪層群上部は海成粘土を挟んでくる。1962年当時に比べ宅地開発が進み,露頭条件が悪くなっているため,当時ほどの詳細な調査はできなかったが,シルトと砂の互層を中心に比較的多くの露頭が確認できた。今回の調査では砂層が比較的多かったが,厚い粘土層も確認している。また,大阪層群の上位にはくさり礫を含む段丘堆積物が観察されている。この段丘堆積物は深草団体研究会(1962)では,鞍ヶ谷累層及び桃山礫層と記載されている。
この段丘を構成する礫層は主にチャートの円〜亜円礫を主体として,基質は粗砂である。
各露頭で観察される地層の走向傾斜は,大まかに,走向が南北方向であり,傾斜は西傾斜である。傾斜の角度は10〜30度程度であり,山際ほどいくぶん急傾斜を示す傾向がある。深草地域北部では走向が北西−南東方向に変わるが,傾斜は南西方向で角度は北側と余り変わらない。しかし,大阪層群と段丘堆積物の間に傾斜の大きな違いが見られないが,段丘堆積物は走向のばらつきが大きく,大阪層群の走向はほぼ一定している。
深草地区以南では御陵が多く十分な踏査ができなかった。数少ない露頭で観察された地層は高位段丘堆積物であると考えられ,礫層主体である。
桃山地域では高位段丘堆積物と考えられるくさり礫を含む砂礫層が観察された。