花山断層系および勧修寺断層系では、山麓線以西に丹波帯が出現し、節理面の方向はおおむね山麓線と直行しており、特に破砕されている形跡も見られず、堅岩が観察される。また、山麓線前縁部では基盤である大阪層群の露頭はほとんど見られず、一部に段丘堆積物(中位〜高位程度)の礫層が観察されるのみである。地形的には明瞭な撓曲崖が残っているが、宅地開発が進み、多くがコンクリ−ト擁壁で隠されている。数少ない露頭の中でK−1地点では大阪層群の変形が観察された(図3−3)。K−1以外では大阪層群、段丘堆積物を含めて変形構造は見られなかった。
勧修寺断層南側(山科川以東)は、明瞭な断層崖が見られ、醍醐団地では、急傾斜を持つ大阪層群が観察された(K−2、図3−4)。
小栗栖断層沿いでは比較的多くの露頭が観察された。北部ではリニアメントの東側にも丹波帯の露頭が見られた。それら丹波帯で観察された節理面は花山断層や勧修寺断層東側で見られた丹波帯と同様に、リニアメントと直行する。
小栗栖断層中部では傾斜した大阪層群を水平に堆積した段丘堆積物が覆う露頭(OG−1、図3−5)が観察された。露頭の位置はリニアメントの約100m東側であり、さらにリニアメントから200mほど離れた地点でも、大阪層群の傾斜した露頭が観察された(OG−2、図3−6)。両地点での大阪層群の傾斜は、50°程度であり大きな違いは見られない。このことから小栗栖断層は比較的幅のある大阪層群の傾斜帯を持つ断層であると考えられる。
南部ではリニアメントの西側で20〜35°の傾斜を持つ大阪層群が観察され、そのさらに西側では丹波帯が観察された。
以上から小栗栖断層は、現在推定されているリニアメントより東側に存在するのではないかと思われる。