(1)L1測線(新十条通り)

明瞭で連続性の良い反射面がほぼ水平方向に分布する。その反射面の分布を浅い方から深い方へ、ならびに東西方向に追跡していくと、急に明瞭で連続性のよい反射面がとぎれるところに行き当たる。この反射面のとぎれる境界が地質境界や地質構造の境界面(断層、撓曲帯、傾斜帯など)に当たるものと推定した。

・基盤岩上面

深度方向にみていくと、

測点 20m(新大石道との交差点)付近:標高TP−170m

測点 200m(大石神社交差点)付近  :標高TP−230m

測点 400m(旧安祥寺川右岸)付近  :標高TP−260m

測点 600m(折上神社)付近     :標高TP−160m

測点1000m(坂上田村麻呂公園)付近 :標高TP−270m

測点1200m(山科川右岸)付近    :標高TP−290m

測点1560m(山科区役所)付近    :標高TP−320m

となる。

これらの標高よりも深いところには、明瞭な反射面がない。これらの深度を結んで、基盤岩上面と推定した。ここで基盤岩とした深度におけるデータ処理時の区間速度値は、周辺の中・古生層内で実施されたPS検層の速度値とも矛盾しない。

・大阪層群内の堆積構造

大阪層群内の反射面群は測点1500m付近を例にした場合、標高TP−120m以浅とTP−180m以深には反射面群が東西に連続し、この間ではあまり顕著な反射面は確認できない。この3層の境界は、後述のL2測線にも認められた。

a)大阪層群で得られる明瞭で連続性のよい反射面は、大阪平野などで行われた探査結果をみると、海成粘土層と砂層とがリズミカルに互層する大阪層群上部層で顕著であり、山科盆地でもその傾向は変わらないと推定した。

b)海成粘土層の中ではMa3が、特に広域にわたり連続性のよいといわれている。

c)測点160mで行われた既存ボーリングデータ(京都市都市計画局,1992)によると、標高TP+24m付近にピンク色の火山灰、TP+16.35〜−12.65m(見かけの層厚約29m)の半固結状青灰色粘土を確認していることから、ピンク色の火山灰をサクラ火山灰、青灰色粘土をMa6と仮定すると、測点160m付近ではTP−80mの明瞭な反射面がMa3に対比される。

d)上記のc)に述べたMa3相当の反射面は、東へ追跡すると、測点1500m付近の標高TP−120mに連続する。

上記を総合すると、標高TP−120m以浅は大阪層群上部、それ以深は砂・礫層主体の大阪層群下部に対比できると解釈した。

大阪層群上部と解釈した部分では、明瞭で連続性の良い反射面が7枚あり、層厚は100m程度と見積もられる。これらの反射面と地層の対比については、この深部まで掘削された既存ボーリング資料がないので、今後のボーリング調査によって確認することが必要である。

・断層・変形構造

測点1100m付近の深部では反射面のたわみが見られる。浅部には反射面の振幅低下が見られる。この現象は、地表付近に確認された活構造(背斜軸)と、山科川に厚く堆積した河床礫の分布が影響したものと推定した。

測点800mより西側区間には幅広い断層変形帯が次のように推察された。

a) 基盤岩上面には比高約100mの高まりが認められる。測点700m〜800mでは、標高TP−300〜−200mの反射面がこの基盤岩上面の高まりに向かって消滅し、大阪層群が基盤岩にアバットしている。

b)大阪層群の反射面には褶曲構造が認められる。

測点400〜700mには背斜構造が見られる。測点680m付近に見られる段丘面上の背斜軸をつくった地質的要因の可能性が強い。測点450m付近を境にして西側で反射面の間隔が広いのは、東上がり西下がりの断層変位が累積して、西側の堆積速度が増大したためと推定される。

c)測線起点の西方から地表の測点160mに衝上する断層の可能性がある。測点200m付近より西側では、@基盤岩を切る明瞭なずれが認められないこと、A基盤岩上面が約30゚東傾斜すること、B大阪層群には明瞭な反射面が認められないことから、測線起点付近の衝上断層によって測点200m付近より西側に大阪層群中の撓曲帯が形成されていると推定することができる。測点200mは勧修寺断層のリニアメントが通る付近である。測点450〜500mでは、大阪層群上部の反射面を分断する断層の可能性がある。