段丘層は、上部では粘性土主体で、その上部には腐植土層、火山灰層を挟んでいる。下部は礫主体で、その上半部は河川による淘汰を受け、礫径も揃っているが、下半部の礫層は淘汰が悪く、粘土の偽礫を多く含んだり、径40〜50mmの亜角礫主体で基質の少ない礫質土を呈したりする。
トレンチ箇所では、粘性土は比較的固結しているが、下部の礫層の締まりが悪いことや礫の性状から、大阪層群とは考えられず、段丘層に対比した。
トレンチ底面の西端、ボーリングBN−1の深度9m付近、BN−3の深度11.5m付近の粘土層および腐植土が肉眼観察上、類似していること、その上下に分布する礫層の性状を観察した結果、上位の礫層はトレンチの淘汰の悪い礫層に類似し、下位の礫層は砂分を比較的多く含む層相を示し、トレンチでは観察されなかったものであることから考慮して、この粘土層および腐植土層を大阪層群として、それより上位の地層を段丘層とした。
撓曲崖の西に広がる段丘面上で行ったボーリングでは、深度0.8m以下に分布するシルト、砂には、地層の傾斜構造や小断層が認められたことから、大阪層群と判断した。
撓曲崖の下盤側に厚く堆積している段丘層は、撓曲崖付近で大阪層群にアバットするように堆積していると解釈した。
腐植土層や粘土層などの地層境界の勾配に次のような累積性が認められた。
@腐植土層(1)(上から1枚目) BN−1より西側5° 同東側2°
A腐植土層(2)( 〃 2枚目) 〃 不詳 〃 5°
−v− v− v− v− v− AT火山灰 −v− v− v− v− v−
B腐植土層(3)( 〃 3枚目) BN−1より西側10° 同東側2°
C段丘礫層上面 〃 10〜20° 〃 8°
〃 基底
−−−−−−−−−−−−−−− 大阪層群上面 −−−−−−−−−−−−−−−−−
D腐植土層 BN−1より西側20〜30° 〃 10°
腐植土層(3)およびAT火山灰は明らかに堆積後に東へ撓んでおり、腐植土層(1)には大きな撓みが認められない。したがって、腐植土層(3)と同(1)の間に、少なくとも1回の断層活動があったことが分かる。14C年代測定結果、腐植土層(1)から約11,000y.B.P.を得た。したがって、AT火山灰の堆積した約25,000年前から約11,000年前までの間に断層活動があったと考えられる。
さらに、トレンチ壁面の観察の結果、A層とB層の間に傾斜不整合が認められ、この間にも断層活動があったと想定される。A層の年代は対比される腐植土5(ボーリングBN−1)の14C年代48,360y.B.P.が得られ、B層の年代として腐植土4(ボーリングBN−1)の14C年代35,430y.B.P.が得られていることから、この断層活動の年代は、48,360年前から35,430年前の間と考えられる。
以上のことから、段丘層は西上がり東下がりの断層運動(撓曲運動)が継続する環境下で堆積したものと考えられる。