(2)花粉分析

採取した7試料の内,2試料を分析した。各試料の採取層準は

KTP−1・・・B−2層

KTP−2・・・A−1層

である。

1)結果

花粉分析の結果を表5−4に示す。解析を行うために計数の結果にもとづいて,花粉化石群集図を作成した(図5−6)。出現率は,木本花粉(Arboreal pollen)は木本花粉の合計個体数を,草本花粉(Nonarboreal pollen)とシダ類・セン類胞子(Pteridophyta&Moss spores)は花粉・胞子の合計個体数をそれぞれ基数とした百分率である。図表において複数の種類をハイフォン(−)で結んだものは,その間の区別が明確でないものである。

以下に各試料ごとに記述する。

・KTP−1試料

本試料は花粉化石を全く産出しない。

・KTP−2試料

木本花粉ではツガ属とマツ属単維管束亜属(いわゆるゴヨウマツ類)が優占し,モミ属,トウヒ属,コウヤマキ属,コナラ属コナラ亜属(以後,コナラ亜属と記す),ニレ属−ケヤキ属,ハンノキ属などを伴う。草本花粉とシダ類胞子ではイネ科と属科不詳のため他のシダ類胞子として一括した胞子が優占し,カヤツリグサ科,ヨモギ属,キク亜科などを伴う。

2)考察

・TKP−1試料

本試料は花粉化石を全く産出しないので古環境および堆積年代の解析は困難である。

・TKP−2試料

ツガ属とマツ属単維管束亜属が優占し,モミ属,トウヒ属,コウヤマキ属,コナラ亜属,ニレ属−ケヤキ属などを伴う本試料の花粉化石群集を,ツガ属−マツ属単維管束亜属群集と呼ぶ。針葉樹のツガ属には温帯地域に分布する種も含まれるが,花粉化石群集中には冷温帯から亜寒帯要素のマツ属単維管束亜属が多産すること,アカガシ亜属などの暖温帯要素を含まないことから,多産したツガ属花粉は主に亜寒帯に分布する種(おそらくコメツガ)と推定される。したがって,周辺の植生はツガ属とマツ属単維管束亜属を主とした冷温帯〜亜寒帯針葉樹林が成立していたと推定される。当時の気候は冷温帯から亜寒帯性の気候であったと推定される。

大阪周辺地域におけるウルム氷期以降の花粉化石群集では,氷期の花粉化石群集中のE2とE4亜帯においてマツ属単維管束亜属,トウヒ属,モミ属,ツガ属が優占する花粉化石群集(とくにマツ属単維管束亜属が高率)がみられる(古谷,1979)。本試料のツガ属−マツ属単維管束亜属群集はこれらに類似し対比される。また,本花粉化石群集は大阪湾沿岸におけるP2帯のg〜h亜帯(Furutani,1989)の特徴とも類似し,対比される。E2亜帯の年代が約28,000〜30,000年前,E4亜帯の年代が約20,000年前後(古谷,1979),P2帯のg〜h亜帯の年代が約25,000〜15,000年前(Furutani,1989)とされることから,本試料の堆積年代は約30,000〜15,000年前と推定される。