@両測線とも測線中央部付近から東側では,大阪層群が水平方向に連続して分布する状況が明らかであり,この範囲には断層による地層面の顕著なずれは認められない。その下位に分布すると推定される中古生層上面の深度は,松尾測線が標高約−290mの反射面に樫原測線が標高約−320mの反射面に対比され,松尾測線の方が30m程度浅い。
A大阪層群と解釈した範囲の上半部では,連続性が良く反射強度の強い反射面が複数枚分布する。これに対し下半部では反射面の連続性もやや乏しく,反射強度も弱い。この境界を松尾測線では標高約−130mの反射面,樫原測線では標高約−140mの反射面とすると,これらより浅部の反射面については両測線間で概ね対比でき,前述したようにそのうちのいくつかは海成粘土層によるものと考えられる。速度解析から得られた速度でも,これらの深度を境にして異なり,深部の方が大きい。従って,この深度を境に堆積環境の大きな変化が推定される。
B両測線とも反射面水平分布範囲の西側には,西上がりの反射面の傾斜帯が分布する。これは水平分布範囲とのつながりから,水平に堆積した大阪層群が樫原断層を形成した構造運動によって大きく変形した範囲と考えられる。
C傾斜帯と東側の反射面水平分布範囲との境界付近については,松尾測線では2枚の反射面が明瞭に連続しており,そこまでの範囲には断層による地層面の顕著なずれは認められない。樫原測線では反射面が不明瞭または断続していて,地層面のずれの有無を判断することはむずかしいが,顕著なずれは考えにくい。
D樫原測線の傾斜帯の西側では,反射面が標高−100m付近までほぼ水平に分布し,傾斜帯との境界であるCDP No.70〜80付近に東落ち,西傾斜の断層が推定される。松尾測線では傾斜帯の西側にこのような水平の反射パタ−ンは明瞭に認められない。ただし,松尾測線の傾斜帯の規模が樫原測線と同程度であれば,松尾測線でも測線南西端近くのCDP No.560付近に断層が存在する可能性があり,傾斜帯は測線の外(西側)にまで及ぶことになる。
E樫原測線では,傾斜帯を挟んで中古生層上面の比高は約220mである。