測線によって処理の内容が一部異なるため,重錘落下式震源を用いた松尾測線の処理のフロ−を図3−11(a)に,バイブレ−タ震源を使用した樫原・灰方測線の処理のフロ−を図3−11(b)に示す。
なおデ−タ処理は当社デ−タ処理センタ−の下記のシステムを用いて行った。
・ハ−ドウエア パワ−チャレンジ,ス−パ−コンピュ−ティングサ−バ−
(米国,シリコングラフィックス社)および周辺機器
・ソフトウエア FOCUS反射法デ−タ処理ソフト
1)デ−タ処理基準面
デ−タ処理の初期基準面は,松尾測線では標高0m,樫原測線では標高+30m,灰方測線では標高+60mである。最終的には重合処理断面図,マイグレ−ション処理断面図では基準面をシフトして,松尾測線では50ミリ秒を標高0m,樫原測線では30ミリ秒を標高+30m,灰方測線では80ミリ秒を標高+60mとした。
2)フォ−マット変換
磁気テ−プに記録されているデ−タを,処理で使用できるようにフォ−マット変換をする。
3)相関(樫原測線,灰方測線のみ)
地面への入力信号がスイ−プ波形であるバイブレ−タ震源を使用した場合,受振器で記録された信号と基準波(スイ−プ波形)の相互相関をとることによって,パルス型震源を使用して得られるデ−タと同等のデ−タを得る。
4)アンプリチュ−ドバランシング
ゲ−ト内に相対的に大きな振幅の波があって,A.G.Cではうまく振幅調整ができない場合に,この処理で振幅調整を行った。
5)ノッチフィルタ−
商用電源からのノイズを除去するために,60Hzのノッチフィルタ−を使用した。
6)バンドパスフィルタ−
S/N比の悪い周波数帯域をカットするために,以下の周波数範囲のバンドパスフィルタ−を使用した。
<重合前> <重合後>
松尾測線:30〜100Hz 20〜120Hz
樫原測線:5〜120Hz 20〜100Hz
灰方測線:10〜60Hz 20〜60Hz
7)速度フィルタ−
P波反射波の周波数帯域は,原波形に含まれる雑音波のうち波動によるもの,例えば表面波・音波・信号波以外の実体波の周波数帯域と一部重複することが多く,周波数の違いに着目して行うバンドパスフィルタ−だけでは除去しきれない場合がある。しかし,見かけの速度(各受信器での観測波形を並べたときに見られる波列の傾き)には差がある場合が多いので,この違いに着目して雑音波を除去するフィルタ−が速度フィルタ−である。松尾測線で使用した。
8)デコンボリュ−ション
震源から出た地震波パルスは,地層や観測システムのフィルタ−作用によって歪められ,分解能の悪い波形となる。これを元のシャ−プな波形に戻す処理である。
9)初動ミュ−ト
反射記録が相対的に振幅の大きな初動によってかき消されるような場合に,初動をカットすることによって記録を見やすくする処理。松尾測線で使用した。
10)CDPソ−ティング
CDP重合を行うために,発振毎にまとまっているトレ−スを,共通反射点(CDP)をもつトレ−ス毎に編集する。
11)静補正(標高補正)
表層部の速度変化や地形・表層厚の変化などによって生じる反射走時のばらつきを補正する処理。
12)屈折波解析
静補正をする際,補正値が必要となるが,これを屈折波解析により算出する。
13)速度解析,NMO補正,CDP重合
これらの処理の内容は前節を参照されたい。速度解析によって得られた重合速度および区間速度を表3−2,表3−3,表3−4に示す。
14)ミュ−ト
大きな角度で反射してきた波は鉛直方向の見かけ速度が大きいため分解能が悪く,これは動補正後,波形の間延びとなってあらわれる。このままでは重合記録の分解能が低下するので,間延びの激しい部分をカットする。
15)残留静補正
静補正を施した後,反射走時にまだ残っているばらつきを補正する処理。
16)マイグレ−ション
反射法の通常処理断面は傾斜した反射面や複雑な形状をした反射面を正しく表していないので,これを正しい位置や形状に戻すための処理。
17)A.G.C
トレ−スの時間方向の振幅調整。反射トレ−スを適当な時間間隔で区切って,その時間間隔(A.G.Cゲ−ト)の中で振幅の平均値を一定にする処理。本処理ではゲ−ト長を1000msecとした。
18)深度変換
速度解析によって得られた区間速度を参考にして,マイグレ−ション処理断面図の縦軸を時間から深度へ変換し,深度変換断面図を作成した。