S/N比を向上させ,この微弱な反射波を抽出するための基本的かつ代表的なデータ処理方法が,前述のマルチチャンネル測定法で取得したデ−タを用いて行うCDP重合である。以下にCDP重合に至るまでのデ−タ処理について述べる。
図3−9はマルチチャンネル方式の測定パタ−ンを示したもので,同時受振チャンネル数48の場合である。
図3−9aのようなパタ−ンで測定を行うと,地表,反射面とも水平な場合,各反射点の位置は発振点各と受振点の中点になり,各反射点の間隔は受振点間隔の1/2になる。このようなパタ−ンで発振点と受振点群をある一定間隔で移動させながら測定していくと,同図cのように反射点群もそれに伴って移動していく。いま,同図c,dのようにある反射点(ここではCDP No.45)に注目すると,測定系の12回の移動によって,CDP45では伝播経路の異なる12通りの反射波に関するデ−タが得られる。このような意味で反射点をCDP(Common Depth Point=共通反射点)と呼ぶ。
CDP重合とはこれらの反射波を重ねてひとつにまとめ強調する処理のことだが,その前処理としてこの12通りの反射波を全てオフセット0mすなわち,発振点と受振点が同一でCDPの真上にある時の反射波に補正しておく必要がある。
図3−10においてオフセットXでの反射波の往復時間TXは,次式で表される双曲線になり,Xが大きくなるほどTXも大きくなる。
TX2=T02+(X/V)2
ここに T0:オフセット0mにおける反射波の往復時間
V :反射面までの平均速度
そこでいろいろな速度を与えて最も重合効果が現れる,すなわち反射波の並びに最も適合するような双曲線の式を求めることがT0とVを求めることになる。このデ−タ処理を速度解析という。このときの速度は重合速度と呼ばれ,これからおおよその区間速度を求めることができる。
図3−10において各トレ−スから時間補正量△TX=TX−T0を差し引けば,右下がりの反射波列は全て時間T0まで持ち上がり,横一線に並ぶ。この処理をNMO補正(動補正)という。
この後,時間のそろった反射波を加え合わせることによって反射波を強調して表現することができる。この処理をCDP重合(あるいは水平重合)という。今回は最大30重合になる。この処理は表面波や重複反射等のノイズを減ずる効果もあり,S/N比の向上に果たす役割は大きい。