(3)樫原測線と松尾測線との比較

a)両測線とも測線中央部付近から東側では,大阪層群が水平に連続して堆積する状況が明らかであり,この区間には断層による地層面の顕著なズレは認められない。大阪層群の下位に分布すると推定される中・古生層の上面深度は,松尾測線では標高−290mの反射面に,樫原測線では標高−320mの反射面に対比され,松尾測線の方が30m程度浅い。

b)大阪層群と解釈した範囲の上半部では,反射強度の強い反射面が複数枚ほど連続する。これに対し,下半部では反射面の連続性もやや乏しく,反射強度も弱い。速度解析から得られた速度も,上・下半部の境界を挟んで異なり,深部の方が大きい。松尾測線では標高−130m付近の反射面,樫原測線では標高−140m付近の反射面がその境界に相当する。

松尾測線の標高−130m付近の反射面,樫原測線の標高−140m付近の反射面を基準にして重ね合わせると,境界より浅部の反射面が両測線間で概ね一致し,この地域の大阪層群の堆積環境変換期と考えることができる。そして,文献資料から,この反射面が大阪層群下部と中部の境界に当たる第3海成粘土(Ma3)に相当するものと判断される。

c)両測線とも反射面水平分布区間の西側には,反射面が東へ大きく傾斜する区間である。これは東側区間に対して,大阪層群が樫原断層の活動によって大きく変形した傾斜帯と考えられる。

d)傾斜帯とその東側区間との境界付近には,松尾測線では2枚(上記bから類推してMa4,5と推定する)の反射面が明瞭に連続しており,断層による地層の大きな変位はないと考えられる。

樫原測線では反射面が不明瞭または断続している。

e)樫原測線の傾斜帯の西側では,反射面が標高−100m付近までほぼ水平に分布し,傾斜帯との境界に東落ち,西傾斜の逆断層が推定される。

f)樫原測線では,傾斜帯を挟んで基盤の変位は約220mと推定される。