(3)文献による断層露頭記載

吉岡(1987)は京都盆地西縁断層のなかで3箇所の露頭について記載を行っている。亀岡断層1箇所,樫原断層1箇所,金ヶ原断層で1箇所である。各地点は図1−5のLoc.3〜5である。以下に各露頭の記載を記す。

●Loc.3(亀岡断層,老の坂峠)

リニアメント上で河谷に系統的な左ずれオフセットが認められ,最大の屈曲量は約 200mである。

●Loc.4(樫原断層)

シルト層・礫層が走向N20゚Eでほぼ直立しているのが見られる。

●Loc.5(金ヶ原断層)

2層の海成粘土層が逆転し,見かけ上西へ傾斜している。また,砂層中のシルト層が複雑に流動・変形しており,堆積直後の水を十分に含んだ状態で変形したことが推定される。

植村(1990)は17箇所で露頭の記載を行っている。樫原断層では3箇所,光明寺断層で6箇所,走田断層で2箇所,金ヶ原断層で2箇所,天王山断層で2箇所記載している。さらに西山断層の南延長部にあたる神内断層で2箇所の露頭を記載している。各地点は図1−6図1−7に示されている。以下に各露頭に記載を記す。

◎樫原断層

●Loc.1(松室)

丹波層群の頁岩がN30゚E,25゚Wの低角逆断層で大阪層群に衝き上げている。断層 面は0.5mの粘土化した破砕帯をもち,下盤の大阪層群の礫層は逆転している。これより北方に大阪層群は分布しない。

●Loc.2(樫原)

N−S,28゚Eの撓曲をなす粘土・礫層互層がN10゚W,90゚の断層により切られ,直立するようになる。断層の変位量は10m程度の西側隆起を示す。

●Loc.3(物集女)

N22゚W,30゚〜40゚Eの撓曲が見られる。

樫原断層はこれより南では東へ10〜15度傾斜する大阪層群最上部の礫層が観察されるだけである。

◎光明寺断層

●Loc.4(南春日町南西)

大阪層群がN30゚〜40゚W走向で幅80m以上にわたって直立している。さらに高位段丘層が東へ40度傾斜しており,約15mの西側隆起を示す。

●Loc.5(灰方南方)

丘陵の開析谷に約50〜60mの左ずれオフセットが生じている。

●Loc.6(上羽南方)

大阪層群の上部層がN38゚W,90゚の断層により直立し,下部層の砂礫層と接している。比高25m程度の断層崖が生じている。

●Loc.7

低位段丘相当の角礫層が大阪層群と断層で接しており,約1mの変位が観察された。

●Loc.8(長法寺)

工事中に図1−7のような断層露頭が観察された。N45゚W,50゚Sの主断層があり,数本の分岐した断層を伴っている。上盤は70〜90度東に急斜する大阪層群上部で, 下盤の赤褐色の砂礫層と逆断層で接している。この砂礫層はMa7より上位の層準 のものであるが変位量は不明である。これらの構造を切って高位段丘堆積物が水平 に堆積している。

●Loc.9(天神三丁目)

丘陵東縁に比高約20mの崖があり,その西側で大阪層群中にN50゚W,80゚Sの2本の逆断層が観察され,0.5mの西上がりの変位を与えていた。

南延長では,長岡天神付近で15m,友岡付近で5m程度の崖が連続しており,南ほど比高は低下していく。

◎走田断層

●Loc.10(走田神社)

高位段丘礫層がN44゚E,86゚Sで大阪層群とともに直立している。この断層による高位段丘面の垂直変位量は北上がり約50mである。

●Loc.11(奥海印寺)

小泉川の低位段丘面上に比高約2mの北上がりの低断層崖が認められる。

◎金ヶ原断層

●Loc.12(奥海印寺)

丹波層群の頁岩と大阪層群とがN10゚W,90゚の逆断層で接している。大阪層群は幅100m以上にわたり,急傾斜している。

●Loc.13(こがね台)

大阪層群中に両翼部が急傾斜する閉じた向斜軸が形成されており,その両側に断層が存在する。この構造は高台四丁目〜小倉神社付近まで連続する。向斜構造は幅100m以下であり,断層破砕帯に引きずり込まれた大阪層群の変形を示していると見られる。

◎天王山断層

●Loc.14(宝寺)

角礫層が丹波層群の頁岩と80度の急傾斜で接している。断層面は不明瞭であるが,断層関係と推定される。

●Loc.15(東大寺)

N56゚E,80゚Nの高角逆断層が見られ,大阪層群は垂直から逆転にまで変位している。

◎神内断層

●Loc.16(若山台)

大阪層群の砂泥互層がN16゚W走向で東へ60度傾斜しているが,これを覆う角礫層に変位は見られない。

●Loc.17(島本高校)

N26゚で西へ30〜60度傾斜する大阪層群が見られるが,新期の角礫層は変位を受けていない。