上記したように,本調査地点の地質層準は大阪層群海成粘土のMa2相当層準であることが明らかとなった。これらの地質情報をもとに,樫原断層の上下盤における同一層準の標高差をもとに,断層の鉛直変位量とその平均変位速度を推定することが可能である。しかし,図9および図10に示すように断層の下盤側における地質層準は,大阪層群海成粘土層のMa3より上位である。そこで,本調査地点に最も近い五条測線西端部におけるMa2相当層準の分布深度について,京都および大阪地域における深層ボーリングデータをもとに以下のように推定した。
表5は,大阪平野および神戸地域の既存の深層ボーリングにおける大阪層群海成粘土Ma3〜Ma6間の地層厚さをもとに,Ma3〜Ma2間の地層の厚さを推定したものである。この表に見られるように,各地域における堆積環境の違いによりそれぞれの地層の厚さは異なるが,表中のB/A値はそれほど大きく異ならない。これをもとに京都盆地におけるMa3〜Ma2間の地層厚さの推定値を示すと表5のとおりである。
表5 京都盆地におけるMa3〜Ma2間の地層厚さの推定
図9 京都市の地下構造調査結果
図10 京都市の地下構造調査概要図
以上より,図9に示す五条測線西端部におけるMa3相当層準の分布深度が標高約−200mであることより,本調査地点の近傍における樫原断層下盤側のMa2相当層準の分布標高は約−240mと推定される。また,本調査地点において確認された先述のMa2相当層準の標高は約90mであることより,その標高差は約330mとなる。
一方,大阪層群海成粘土Ma2相当層準の堆積年代を図11より,約95万年前とすると,この地点における樫原断層の上下平均変位速度は以下のように推定される。
330m/95万年 ≒ 0.35m/1000年
図11 大阪層群の地質層序概要図
ここに得られた結果は,表6に示す地震調査研究推進本部における三峠・京都西山断層帯の長期評価結果と整合する結果となっている。
表6 京都西山断層帯(樫原断層)の平均変位速度(上下成分)