3−2−1 火山灰(テフラ)分析

第1露頭において肉眼で識別されたピンク色を帯びたテフラ3試料(S1,S3,S4),ややピンク色を帯びた白色シルト(S2),さらに,露頭の上部に確認されたゴマシオ状テフラ(S5=KTG−T1)について分析を行った。

@ S1

細砂サイズのガラス質火山灰であり,火山ガラスはバブルウオール型とパミス型からなり,緑色普通角閃石を多く含み,斜方輝石を微量ながら含む。屈折率は,火山ガラスが1.4996−1.5014,斜方輝石は1.7051−1.7093,角閃石は1.6704−1.6871程度にまとまる。

色調やこれらの特徴より,本テフラは大阪層群のピンク火山灰に対比できる。

A S2

シルトサイズ粒子が多く,微量の極細砂サイズの粒子を含む。極細砂サイズの粒子は長石類,緑色普通角閃石,火山ガラスおよびカミングトン閃石,石英などテフラ起源粒子を主体とする。火山ガラスはパミス型を呈し,屈折率は1.5004−1.5022にまとまる。

本試料は大阪層群のピンク火山灰に対比されるS1の上位に位置し,上記の特徴は光明池V火山灰か,あるいは山田V火山灰に類似するが,明確な対比はむずかしい。

B S3

細砂サイズのガラス質火山灰であり,火山ガラスはバブルウオール型とパミス型からなり,緑色普通角閃石を多く含み,斜方輝石を微量ながら含む。火山ガラスの屈折率は,1.4983−1.5009を示す。

色調や上記特徴,および露頭における層序関係から,本テフラは大阪層群のピンク火山灰に対比できる可能性が高い。

C S4

細砂サイズのガラス質火山灰であり,火山ガラスはバブルウオール型とパミス型からなり,緑色普通角閃石を多く含み,斜方輝石を微量ながら含む。火山ガラスの屈折率は,1.4998−1.5012を示す。

色調や上記特徴,および露頭における層序関係から,本テフラは大阪層群のピンク火山灰に対比できる可能性が高い。

D S5(=KTG−T1)

緑色普通角閃石(緑色ホルンブレンド)が多く,斜方輝石,カミングトン閃石(カミングトナイト),石英(β−石英)を含み,少量のパミス型火山ガラスを含む結晶質テフラである。屈折率は,火山ガラスが1.4976−1.5020,緑色普通角閃石(緑色ホルンブレンド)が1.669−1.681,カミングトン閃石(カミングトナイト)が1.659−1.661にまとまる。これらより,本テフラは上桂火山灰層に対比できる可能性が高い。

また,S1およびS2については,EDX分析により火山ガラスの主成分分析を行った。表3表4にその結果を示す。

表3 S1テフラの火山ガラスEDX分析結果

表4 S2テフラの火山ガラスEDX分析結果

上記の分析結果より,S1テフラはほぼ確実にピンク火山灰に対比されるものと判断される。また,S2テフラは,火山ガラスの屈折率では特定できなかったが,表4に示す主成分分析の結果より,光明池V火山灰に対比される可能性が高いと考えられる。