図1 調査概略位置図
図1に示す露頭調査地域は樫原断層の500〜600m西側に位置し,観察されるおもな地質種類は丹波層群に属する基盤岩と,それを不整合に覆って分布する大阪層群であり,これらの両者には複数の正断層が観察される。
露頭観察の結果,基盤岩の直上に分布する大阪層群より3枚の火山灰が識別された。火山灰分析,花粉分析,フィッショントラック年代測定などの分析結果より,それぞれ下位よりピンク火山灰,および光明池V火山灰,上桂火山灰などに対比される可能性の高い火山灰であり,これまでの地質情報と整合する結果として得られた。これらの結果より,基盤岩を不整合に覆って分布する地層は,大阪層群海成粘土のMa2相当層準に対比されることが確実と判断される。また,花粉分析結果においても,メタセコイアを明確に含有する結果が得られており,Ma3よりも明らかに下位の層準を示すことより,これも矛盾のない結果となっている。
一方,基盤岩と大阪層群に影響を与える正断層群は,樫原断層によって生じた隆起帯における引っ張り応力場に生じた正断層と推定され,その変位は露頭観察および火山灰層序との関係より,Ma2相当層準より上位の地層には影響を与えていないことが明らかとなった。
なお,既存資料として収集したボーリング柱状図データは,上記の露頭調査地域に含まれる資料はわずかであり,今後における広域的な地質解析資料に対する基礎資料としたい。