(1)高密度電気探査

想定される断層の両側とそれらに直交方向の計3測線で実施した。

探査の結果、基盤形状はV字を示すような明瞭な谷地形が確認できず、なだらかな盆状であった。高密度電気探査の調査結果を図3−48に、調査結果から得られた比抵抗値と表2−3に示した土質工学会編「土と基礎の物理探査」に示されている模式的な比抵抗値から推定される土質・岩質を下記および図3−49図3−50に示す。

1)調査結果

@地表浅部の低〜中比抵抗部(約30 〜50Ω・m)

●分  布:谷底に沿って地表下約3m以浅を層状に分布する。

●地  質:未固結の粘性土などに相当する。

A浅部の高比抵抗部(約100 〜300Ω・m)

●分  布:山麓の緩傾斜部や地表浅部に分布する。

●地  質:崖錐堆積物、路盤または強風化岩に相当する。

B深部の高比抵抗(約100 〜300Ω・m)

●分  布:深部の大半を占めて広がる。

●地  質:基岩の砂岩・チャート・緑色岩類など相対的に粗粒や緻密な岩質に相当する。

C中比抵抗と比抵抗漸移帯

●分  布: N測線後半とNS 測線50m付近に連続的に分布する。また両測線の終点側に分布する。そのほか水平や垂直的な漸移帯を形成する。

●地  質:高比抵坑部に比べ細粒な岩質や粘土化した状態などに対比され、頁岩、破砕岩、変質岩類などに推定される。

2)調査結果の解釈

高密度電気探査結果から推定される土質・岩質状況と現地で確認される地形・地質状況から推定される地下構造を下に示す(図3−51参照)。

@地表浅部の低〜中比抵抗部(約30 〜50Ω・m)

現在の地表部分を形成し、未固結の粘性土が主体と考えられることから、この部分は粘土を主とする沖積層に対応していると判断される。この層が谷状に深くなっている場所は確認できないため、沖積層は現在の地表面と調和的に堆積し、全体として浅い凹状に分布していると推定される。

A浅部の高比抵抗部(約100 〜300Ω・m)

山麓部や盛土によって作られている道路部分に見られることから、これらの堆積物は、山地の脚部に分布している崖錐堆積物や道路下部に敷設されている砂利層と推定される。また、現地で鉄フェンス、水路、道路付近にも高比抵抗となっていることから、これらの部分では、地表の構造物によって比抵抗異常(偽像)が出現した可能性が高い。

B深部の高比抵抗(約100 〜300Ω・m)

地下深部の大半を占めて広がり、粗粒・緻密な岩質と考えられることから、これらは基盤岩である丹波層群を示していると推定される。上面がわずかに下に凹状を呈していることから、これら基盤上面の形状は浅い凹状を示していると推定される。

C中比抵抗と比抵抗漸移帯

N測線後半とNS 測線50m付近に連続的に分布する。この部分は、周辺の同深度部より比抵抗値が低く、頁岩、破砕岩、変質岩類などに推定される可能性が高い。探査位置周辺の地表踏査結果や空中写真判読結果により、この付近の殿田断層は低比抵抗部部分を通過していると考えられるため、この低比抵抗部が断層運動によって破砕を受けた頁岩部分であると推定される。

図3−48 八栄電探結果

図3−49 八栄地区比抵抗断面図

図3−50 八栄地区比抵抗断面解釈図

図3−51 八栄地区周辺調査位置図