・空中写真判読結果
判読範囲内には、高位段丘面に相当するH面が、丹波町役場付近〜瑞穂町中台付近にかけて広く分布する。H面は北に向かって緩やかに傾斜する平坦面として現存しており、この地域での地表面高度は、標高180−210mである。また、日吉町の殿田地区付近から丹波町の須知川東方までは、基盤の山地や丘陵部の間に、小規模な平坦面として分布している。最高位段丘であるHT面は、丹波町の須知側東方や丹波町役場の西方(現在の丹波自然運動公園付近)、丹波町の曽根、中台地区付近に侵食の進んだ南北方向に延びた尾根状地形として判読されるが、現在は地形改変によって原地形が失われている部分が多い。また、日吉町の日吉ダム南方では、基盤山地中の旧流路と推定される谷沿いに断片的に分布が続いている。地形改変前には、頂部の標高が190−220mで北に傾斜した小規模な平坦面が連続して判読される。中位段丘面であるM面は分布面積が狭く、日吉町殿田地区付近と丹波町の曽根〜中台地区に広がるH面の北側に小規模な分布域が確認できる程度である。地表面の標高は、160−165mで分布面積が狭いため地表面での傾斜ははっきりとしない。低位段丘面のL面は、断層東部の日吉町世木林地区周辺では桂川の現河床に沿って広く分布し、丹波町役場周辺〜瑞穂町中台地区にかけては、H面を開析した谷の内部に分布する。桂川沿いでの地表面高度は程度であるが150−170m、丹波町役場周辺では、地表面の標高が170−190m程度となっている。沖積面は、現在の河川沿いに分布している。
・断層変位地形
写真判読で確認できる断層変位地形は、従来から報告されているものと同様に、日吉町世木林地区(現在は、日吉ダムの湛水により水没)における低位段丘面の変位(北上がり)、日吉町志和賀地区周辺の左横ずれに伴う谷の変位と尾根部での断層鞍部の連続、丹波町役場西方の左横ずれ変位、丹波町曽根〜中台地区にかけての北上がりの低断層崖とその南側に東西方向で連続する地溝状の凹地が確認できた。判読によって得られた断層変位は表3−2のとおりである。
なお、断層が横断する谷部における横ずれに関しては、以下の図3−21のような概念を用いて屈曲量を推定した。まず、高密度電気探査を実施した谷(八栄東、八栄地区)については、高密度電気探査によって埋没した谷の地形を推定することができる。この場合、探査によって得られた谷地形の底部(最低点)を基準点とし、断層を挟んだ両側でこの谷地形のずれを計測することにより、断層運動に伴う谷の屈曲量とした。
次に、高密度電気探査を実施していない谷については、空中写真判読や地表踏査によって得られた表層の情報をもとに、谷低平野の左岸と右岸側それぞれで屈曲量を測定し、その平均値を断層運動に伴う谷の屈曲量とした。個々の屈曲量の算出は図3−27に示す。
図3−21 谷の屈曲量の算出方法
表3−2 殿田断層沿いで確認できる変位地形
A 三峠断層
・空中写真判読結果
段丘面の主な分布は、三峠断層の東西両端部にあたる土師川と高屋川沿いに限られており、それ以外の三峠断層中央付近の山地部では、谷に沿って小規模な段丘面が確認できる程度である。断層西部の福知山市長田野地区周辺では、標高80−100m付近に、南に傾斜した高位段丘面(H面)が広く分布している。一方、この付近では中位段丘面の分布は確認できず、低位段丘面がH面を侵食して形成された谷沿いに、小規模に分布しているのが確認できる程度である。断層東部の高屋川沿いでは、基盤山地の山麓部の標高180−210m付近にH面が分布し、標高160−175m付近には、中位段丘面(M面)が分布する。低位段丘面は小規模にしか分布せず、現河川沿いには沖積面が広がっている。これら両地域以外では、基盤の山地を侵食してできた谷底部に、小規模なH面が確認できる程度である。
・断層変位地形
三峠断層における断層変位地形が報告されているのは、断層中央部にあたる瑞穂町質美地区北方の約8km区間のみである(植村,1988)。今回実施した判読でも、この報告と同様に、基盤の山地やH面を侵食してできた谷が、左横ずれ変位を起こしているという判読結果が得られた。判読によって得られた断層変位は、表3−3のとおりである。個々の屈曲量の算出については図3−24に示す。
表3−3 三峠断層沿いで確認できる変位地形
図3−22 空中写真判読結果および地形・地質データ集成図(三峠断層−1)
図3−23 空中写真判読結果および地形・地質データ集成図(三峠断層−2)
図3−24 空中写真判読結果および地形・地質データ集成図(三峠断層−3)
図3−25 空中写真判読結果および地形・地質データ集成図(三峠断層−4)
図3−26 空中写真判読結果および地形・地質データ集成図(殿田断層−1)
図3−27 空中写真判読結果および地形・地質データ集成図(殿田断層−2)
図3−28 空中写真判読結果および地形・地質データ集成図(殿田断層−3)
図3−29 詳細地形判読図(中台地区)
図3−30 詳細地形判読図(曽根地区)
図3−31詳細地形判読図(須知地区)