トレンチ調査は、推定される断層通過位置を掘削し、壁面を直接観察することから断層の活動形態や、単位変位量、活動周期、最新活動時期などの活動履歴を明らかにすることを目的として実施した。
A 調査位置
トレンチ掘削位置は、殿田断層の八栄東地区(京都府船井郡日吉町殿田小字アチラ地内)にあたり、西方の八栄から東方の日吉にかけて連続するリニアメント上に位置しており、南北にのびる谷が左に屈曲している部分が、現在は水田として利用されている。掘削位置とした水田の西方にはリニアメントの谷が狭まっており、また北東の林道沿いには砂岩露頭が確認されたことから、断層の通過位置が比較的絞り込みやすい地点であると判断した。
B 掘削方法
掘削は大型のバックホウを用いた。掘削箇所が水田であるため、侵入・退場の際、後の水田の使用に支障をきたさないように、水田入り口に鉄板を敷設した。また、埋め戻しの際の完全復旧のために、表層の耕作土をより分けて掘削をおこなった。耕作土は掘削土と混じらないように選別して保存した。
掘削は、幅8m×長さ25m×深さ5m程度の大きさで実施した。さらに、その西方20m付近で断層の有無を確認するために幅4m×長さ20m×深さ3.5mの試掘孔を機械掘削した。掘削後はトレンチ内の壁面を直接観察することで断層の形態を把握するとともに、年代測定を実施して最新の活動時期や活動間隔を推定した。
写真2−4 鉄板敷設状況
写真2−5 耕作土の選別状況
C 安全対策
掘削後は、転落を防ぐためにトレンチの周囲を安全柵で囲うとともに、水田の出入り口に通用口を設置し、業務内容と緊急連絡先等を示した。
写真2−6 安全策設置状況
写真2−7 通用口設置状況
D 観察および試料採取
観察は壁面の水平、垂直方向にそれぞれ1m間隔のグリッドを張り、スケッチ並びに写真撮影をおこなった。年代試料の採取は、14C年代に関しては木片試料を中心として、観察結果から区分した層ごとに採取した。また粘土層中では火山灰年代の測定試料を採取した。
写真2−8 壁面観察状況
E 埋め戻し
埋め戻しは、掘削土に固化材を混合し、埋め戻し後に地盤の沈下などが生じないように土壌改良を行い、さらに掘削土を十分に転圧して掘削前の状況を復元した。
F 調査数量
最終的な調査数量は、掘削土量が360m3、スケッチ面積がN面27m2、E面76m2、W面65m2の計157m2であった。