4−3 保津地点の地下地質層序と構造

保津地点では空中写真判読によるL1面のF2断層撓曲崖を挟んで,上盤側と下盤側でボーリング調査とピット調査を実施した(図4−3−1)。また,地形測量によりL1面の変位量を定量的に示した(図4−3−2図4−3−3)。

ボーリング調査とピット調査では,深度4.1〜5.2mにAT火山灰(26〜29ka)が分布し,ほぼ連続的に追跡できる。L1面構成層であるAT火山灰の傾斜がL1面と同程度であると考えると,調査範囲ではF2断層によるAT火山灰の変位量は約1.5mである。一方,F2断層撓曲崖によるL1面の変位量は約2mであり,L1面の変位量に比べ,AT火山灰の変位量がやや小さく得られた。

L1面の変位量に比べ,AT火山灰の変位量が小さく得られた原因として以下の可能性が挙げられる。

@F2断層は空中写真判読で推定したより幅広い撓曲帯を有しており,本調査ではF2断層によるAT火山灰の総上下変形量をとらえられていない。

AAT火山灰降灰当時の地形面には凹凸があり,AT火山灰の追跡調査ではF2火山灰の変形量を算出できない。

ただし,地形的に推定したF2断層通過位置でAT火山灰の分布高度不連続が認められることは明らかであり,本調査結果は当該地点におけるF2断層の存在を否定するものではない。ただし,L1面やAT火山灰の変位量に関しては今後さらに検討が必要である。