W層は主に礫からなり,シルトや砂が挟在する。図4−2−2と図4−2−3の層序対比図では反射法地震探査結果を考慮して,W層を上位からW−1〜W−10層に区分しているが,W−9層を除いて地層の形成年代に関する情報が乏しい。したがって,ここではW−9層より上位の地層を「W層上部層」,W−9層を「W層中部層」,W−10層を「W層下部層」として,層相や年代および対比結果を述べる。
a) W層上部層(W−1〜W−8)
W層上部層は主に大礫混じり中礫や中礫からなり,砂やシルトを挟む。礫は一般に径1〜5cmの亜角礫主体で亜円礫を含む。礫種は丹波帯起源の頁岩,チャート,砂岩が多く,わずかに石英斑岩を含む。マトリックスは淘汰の悪い粗粒〜極粗粒砂で,やや締まっている。挟在する砂やシルトは層厚数10cm〜1m程度のものが多い。層厚はF1断層下盤側のKA−1孔で約63mと最も厚く,テクトニックバルジ頂部のKA−2孔では約33mと最も薄く,KA−3孔では約50mである。
W層上部層の最下部にあたるKA−1孔のGL−110.2mでKkt火山灰起源とみられる火山ガラスを検出した。含有量がごく微量であることから,再堆積したものであると考えられ,当該層準はKkt火山灰(330〜340ka)の降灰年代以降の地層であると推定される。
b) W層中部層(W−9)
W層中部層は主にシルトからなり,砂や礫を挟む。所々に藍鉄鉱が散在することから,淡水成堆積物と推定される。KA−1孔とKA−2孔ではほとんどがシルトからなるが,KA−3孔では砂や礫を多く挟む。層厚は5〜11m程度である。
KA−2孔のGL−61.7mに層厚約5cmの白色細粒火山灰が挟在する。新鮮なパミスタイプの火山ガラスを多く含み,火山灰起源の有色鉱物として斜方輝石をわずかに含む。火山ガラスの屈折率は1.502〜1.506(モード1.504〜1.505),斜方輝石の屈折率は1.707〜1.713(モード1.709〜1.710)で,町田・新井(2003)によるOda火山灰(420〜450ka)の屈折率と一致する。また,KA−3孔のGL−93.0mでOda火山灰の降灰層準を確認した。これらKA−2孔とKA−3孔のOda火山灰とみられるパミスタイプ火山ガラスの主成分化学組成をEPMA法(EDS)により測定し,町田・新井(2003)によるOda火山灰の組成とほぼ一致することを確認した。
KA−1孔のGL−116.4mと117.1mおよび117.45m,KA−2孔のGL−62.5mと63.4m,KA−3孔のGL−89.8mと93.5mおよび94.0mで花粉分析を行った。スギ属,ブナ属,コウヤマキ属などの本木花粉化石が優占し,降水量が多い温帯性の気候が推定される。KA−1孔の試料では産出頻度は低いがコナラ属アカガシ亜属が産出する。W層中部層は420〜450kaのOda火山灰を産することから,大阪層群Ma9に対比される可能性が高い。花粉分析結果ではMa9の特徴であるアカガシ亜属は優占するほど含まれず,Ma9相当層であると確定できない。
KA−1孔(GL−115.3〜117.1m)の古地磁気測定では5試料すべてが正磁性を示し,W層中部層がブリュンヌ正帯磁期(Brunhes chron)に堆積したことが明らかになった。
W層中部層はOda火山灰(420〜450ka)を挟むことから,層序的に大阪層群のMa9に相当すると考えられる。
c) W層下部層(W−10)
W層下部層は主に大礫混じり中礫からなり,わずかに砂を挟む。礫は一般径2〜6cmの亜円〜亜角礫が多く,礫種は丹波帯起源の頁岩,チャート,砂岩が多く,わずかに石英斑岩を含む。マトリックスは淘汰の悪い粗粒〜極粗粒砂で,やや締まっている。
W層下部層から地層の形成年代を推定する分析結果が得られなかった。