a) 層相
P2ピットの地質は深度0.00〜0.56mが耕土,深度0.56〜0.80mが腐植土からなる旧表土,深度0.80〜1.60mが極細粒砂および礫混じり砂からなる(図3−4−8)。
b) 火山灰分析
P2ピットでは旧表土以深の地層で10cm毎に試料を採取し,火山灰分析を実施した(図3−4−8)。P2ピットでは全体にAT火山灰とK−Ah火山灰が含まれており,これらの火山灰は再堆積によるものと考えられる。特定の火山灰の降灰層準は分からなかった。
c) 14C年代測定
P2ピットでは深度0.7mの腐植土で14C年代測定を実施した。補正14C年代値は4,420±42(yBP)である(図3−4−8,表3−4−1)。
d) 層序
P2ピットの火山灰分析では深度0.8〜1.6mでAT火山灰とK−Ah火山灰が混在して産出し,14C年代測定では旧表土の補正14C年代値として4,420±42(yBP)が得られている。P2ピットの深度0.8〜1.6mの砂層はK−Ah火山灰降灰時期以降の約7,300年前以降,旧表土形成の約4,200年前以前の堆積物であると考えられる。
P2ピットを掘削したL1面は調査地全体の地形面分布をから判断して,保津〜河原林では構成層中にAT火山灰を含む地形面に対比される。さらに,馬路北方のL1面で掘削したP1ピットではL1面構成層中にSUk火山灰(20〜21ka)を挟むことから,L1面は最終氷期に離水した地形面である可能性が高い。
このように,P2ピット調査結果による地層の年代と周辺のL1面の離水時期に関する情報は矛盾する。ただし,周辺のL1面形成時期に関する情報量は非常に多いことから判断すると,P2ピットの深度0.8〜1.6mの砂層はL1面構成層を覆うさらに新しい地層である可能性が高く,その年代が約7,300年前以降,約4,200年前以前であると考えられる。