(6)速度解析,NMO補正およびCMP重合

反射法の解析においてSN比向上の手法として多用されるCMP(共通中間点)重合を行うため、速度解析およびNMO補正を行った。

水平多層構造の場合、CMPアンサンブル(同じCMP[共通中間点]を有するトレース群)内のトレースの反射波走時は近似的に双曲線をなす(2層構造の場合の例を図3−2−16に示すが、左上図中の破線が反射波走時を示す)。なお、双曲線の形状は反射点より上位に位置する層の速度に依存する。水平2層構造の場合、1層下面からの反射波走時は以下の式で表される。

t(x)^2=t(0)^2+x^2/x^2‥‥‥‥‥‥‥‥‥(1)

ここで、t(x)はオフセットxでの反射波走時、t(0)はゼロオフセットでの反射波走時、xはオフセット、vは1層目の速度である。多層構造の場合も、オフセットxに比べ反射面の深度が十分に大きければn層下面からの反射波走時は同様に以下の式で表される。

tn(x)^2=tn(0)^2+x^2/vRMS^2‥‥‥‥‥‥(2)

ここで、vRMSはRMS速度と呼ばれるもので、第i層の速度をvi、鉛直走時をΔtiとすると以下の式で定義される。

vRMS^2=(1/tn(0))Σvi^2Δti‥‥‥‥‥‥‥‥(3)

NMO補正は図3−2−16の上中央図に示すように、オフセット(発震点と受震点間の距離)が、ある大きさの発震点と受震点の組で収録したトレースを、ゼロオフセットでの収録となるように走時の補正を行うもので、補正量はオフセットが大きいほど大きくなる。水平2層構造の場合、NMO補正量ΔtNMOは、上記(1)式より以下となる。

ΔtNMO=t(0)((1+(x/vt(0))^2)^1/2−1)

次に、SN比を向上させるため、CMPアンサンブル内のNMO補正後のトレースを重合し、反射波を強調させる(図3−2−16の右上図)。

上記したNMO補正およびCMP重合を行うため、CMPアンサンブル内の反射波走時より速度を求める。この処理を速度解析と呼び、求めた速度を重合速度と呼ぶ。なお、水平成層構造の場合、重合速度は近似的にRMS速度に等しいと見なされている。

具体的な速度解析は、重合速度の範囲の設定、その中を等分することにより120種類の重合速度を算出、それぞれの重合速度でNMO補正、その後、@NMO補正後のCMPアンサブル内のトレースに対し、狭い時間ゲート内でのトレースの相関をセンブランスにより評価する速度スペクトル法と、ACMP重合し、重合後トレースの振幅やパワーの大きさで重合速度を評価する定速度スタック法を併用した。速度解析の結果例を図3−2−17に示すとともに巻末に速度解析結果を示す。図中の○印は上記の@、×印は上記のAで求めた結果である。印の大きさは、センブランスあるいはパワーの大きさで分けている。