本調査では、亀岡盆地に分布する活断層を対象に、文献調査、空中写真判読、地表踏査調査、物理探査(P波探査)、ボーリング調査及び試料分析を行って、以下の結果を得た。
(1)亀岡断層は、盆地東縁の山麓とその前縁を走る2本の断層からなる。前者の「山麓の亀岡断層」と比べ、後者の「盆地内の亀岡断層」は活動的で、約2万年前以降も活動している可能性が高いことが確かめられた。
(2)亀岡盆地を東西方向に横断する測線でP波探査を実施した。その結果、西側からF1断層、F2断層帯、F3断層帯の3本の断層が発見された。いずれも東側隆起の断層である。F1断層とF2断層帯は共に東傾斜の高角度逆断層である。F3断層帯は東傾斜の中角度逆断層で前者と少し異なる。
F1断層は基盤岩を被覆する厚さ約400mにも達する地層に累積的な変位・変形を与え、その最大変位量は約160mであり、規模の大きな断層である。分布位置や重力探査等から「盆地内の亀岡断層」に繋がる可能性がある。
F2断層帯の最大変位量は数10mで、F1断層に比べて規模は小さい。分布位置から「盆地内の亀岡断層」の分岐断層に相当する可能性がある。
F3断層帯は分布位置から「山麓の亀岡断層」に相当する可能性がある。本調査ではその変位量を確定することはできなかった。
(3)F1断層下盤側の亀岡市農業公園(標高95.8m)で深度約162mのボーリング掘削を行った。得られた試料のほとんどは礫で、薄いシルト−粘土を僅かに含む。火山灰分析から深度11.8m以浅は約7千年前以降の若い地層と思われる。深度32.6mで約9万5千年前の鬼界葛原火山灰(K−Tz)を、深度110.2mで約33万年前の加久藤火山灰(Kkt)起源のガラスを検出した。いずれの火山灰も純層ではないことから、火山灰を含む地層は降灰時期以降の若い地層である。また、花粉分析から深度116〜117mの腐植質シルト−粘土層は約40万年前の大阪層群Ma9最上部と同時期の地層に対比される可能性が示唆された。
(4)反射断面から得られた断層による反射面の変形量と、試料分析から得られた反射面相当の変形した地層の推定堆積年代から、F1断層(「盆地内の亀岡断層」)は約40万年前以降、上下方向にB級下位の活動度であることが明らかにされた。低位段丘上の低断層崖の比高と段丘面の離水期から推定された断層の上下方向の活動度もB級下位を示し、異なる手法で求めた活動度が一致することからその活動度は信頼できるものである。
(5)本調査で、約7千年前と推定される反射面Aはそれぞれの断層(帯)を覆う。断層付近で反射面Aの数mの微細な変位・変形については調査手法の制約上議論できないが、分解能を超える有意な変位や変形は認められなかった。従って、本調査で2万年前以降の断層の最新活動時期についての情報は得られなかった。F1断層(「盆地内の亀岡断層」)の長さや本断層周辺で発生したことが指摘されている1830年の地震との関係についても資料を得るには至らなかった。