1−6−3 亀岡断層の活動性に関するパラメーター

亀岡断層の長さ,平均変位速度,単位変位量,活動間隔および最新活動時期など活動性に関するパラメーターを検討し,以下の結果を得た(表1−1)。

@) 長さ

F1断層は反射法地震探査の馬路測線,河原林測線および保津測線で確認し,確認した区間の長さは約3kmであり,周辺の地形・地質分布を勘案すると,最大の長さは約13kmと推定できる。

F2断層は保津町南方のL1面の撓曲崖から反射法地震探査河原林測線で確認され,確認された区間の長さは約3.3kmである。反射法地震探査馬路測線で確認された断層まで連続すると仮定すると,この区間の長さは約4.5kmである。

「盆地内の亀岡断層」(F1断層+F2断層)の長さは反射法地震探査馬路測線から保津町南方のL1面の撓曲崖までは確実であり,約4.6mとなり,最大の長さはF1断層と同様に約13kmと推定できる。

F3断層の長さに関して本調査では新知見を得られなかったため,「近畿の活断層」(岡田・東郷,2000)による亀岡断層帯B千歳とC諸畑の長さの合計により,長さ約10kmとした。

また,「亀岡断層全体」の長さに関して本調査では新知見を得られなかったため,「近畿の活断層」(岡田・東郷,2000)による亀岡断層帯の長さ12.7kmとした。

A) 平均変位速度

F1断層では反射法地震探査(P波,馬路測線)でB反射面に約65mの上下変位が確認された。B反射面はボーリング調査によるシルト主体の地層(W−9層)に対比でき,W−9層中には約42〜45万年前のOda火山灰が挟在する。したがって,F1断層の42〜45万年以降の長期的な平均変位速度は0.14〜0.15(m/103年)である。

F2断層では地形測量から約2万年前に形成されたと推定されるL1面に1.5〜3mの上下変位量が得られた。F2断層の約2万年以降の平均変位速度は0.08〜0.15(m/103年)である。

F3断層では上盤側と下盤側で同一とみなされる変位基準が確認できなかったため,平均変位速度は得られなかった。

F1断層,F2断層およびF3断層が収束する保津町南方で,地形測量からL1面に6〜9.5mの上下変位が得られた。亀岡断層全体の平均変位速度は0.30〜0.48(m/103年)以上の可能性がある。ただし,保津南方ではF1断層,F2断層およびF3断層の詳細な分布が明らかになっていないため,保津南方のL1面の変位量が何を示唆しているのか,今後の課題として残る。

B) 単位変位量

亀岡断層では,過去の活動履歴に関して精度の良い値が求められていないため,単位変位量は絞り込めていない。

F1断層の活動履歴を「活動履歴解釈A」,すなわち“最新活動時期は約3,700年前以降であり一つ前の活動は3,700年前以降−20,000年前以前である”とすると,単位変位量は馬路地点のL2−2面の傾動による高低差以上すなわち0.52m以上となる。

F2断層では,保津町〜千歳町国分でL1面に比高1.5〜3mのF2断層による撓曲崖が分布することから,単位変位量は1.5〜3m以下となる。L1面が1回の地震イベントを受けているとすると,単位変位量は1.5〜3mとなり,L1面が2回の地震イベントを受けているとすると,単位変位量は0.8〜1.5mとなる。

F3断層の単位変位量は不明である。

盆地内の亀岡断層(F1+F2)や亀岡断層全体(F1+F2+F3)の単位変位量はF1断層に準じた扱いとし,単位変位量は0.52m以上とした。

C) 活動間隔

亀岡断層では,過去の活動履歴に関して精度の良い値が求められていないため,活動間隔は絞り込めていない。

亀岡断層の活動履歴を「活動履歴解釈@」,すなわち“約2万年前以降に1回以上活動し,それ以前およびそれ以降の活動履歴は不明である”とすると,活動間隔は不明となる。

亀岡断層の活動履歴を「活動履歴解釈A」,すなわち“最新活動時期は約3,700年前以降であり,一つ前の活動は3,700年前以降−20,000年前以前である”とすると,活動間隔は20,000年より短くなる。

亀岡断層の活動履歴を「活動履歴解釈B」,すなわち“約20,000年前から約26,000(〜29,000)年前までの間に断層活動がなかった”とすると,活動間隔は6,000(〜9,000)年より長くなる。

D) 最新活動時期

亀岡断層はL1面の形成時期以降すなわち約2万年前以降に活動したことが確実である。馬路町のL2−2面の地形面が断層活動により傾動していると仮定すると,最新活動時期は約3,700年前以降となる。